ボトムズ野郎万歳。そして柳ジョージさんに一献
「炎のさだめ」は名曲中の名曲。しかし、ボトムズの男臭い世界観にはこちらも捨てがたい。亡くなった柳ジョージさんの魂のこもった名曲である。
そういえば、去年2020年5月28日に実物大スコープドッグを見に行っていた。
デザインしたレジェンド大河原氏が稲城市出身ということで稲城長沼駅前が、ちょっとした聖地となっているのだ。
後で知ったので行けるはずもないが、3/15に除幕式が開かれたとのこと。
何でニュースっちゅーんは、いつも終わってから報道するんじゃ(血涙)
根っからのミリタリーファンとしてみれば、ややもすれば“ロマン”に頼らざるを得ないガンダムより、はるかに実現性が高く、兵器としてのリアリティーもあるボトムズの方に昔からより惹かれていた。
実際にローラーダッシュ出来るかどうかはともかくとして、マッスルシリンダーか、それに類するものが開発されれば、実現化は一気に加速するかもしれないからだ。
スコープドッグは、ボトムズに出てくるロボット(アーマードトルーパー、略してAT)の一種で、主人公キリコ・キュービィが主に搭乗するが、あくまで量産機の一機としてであり、馬車馬のように使われ、また打ち捨てられる、哀しき一兵器である。
リアルサイズのATが、神クラスのファンである鉄工職人によって作られていたのは知っていたが、このたび公式でも作られたという。
大河原氏や高橋監督も参加した除幕式には行けなかったが、ある雨上がりの夕暮れについに訪れた。
人気のあまりない稲城長沼駅前広場に、ひっそりとスコープドッグが佇み、控えめにライトアップされている。
時々通る人はいるが、立ち止まって見る人や、ましてや写真を撮る人も自分の他になく、歴代実物大ガンダムの大盛況ぶりとはずいぶん異なる。
が、この寂寥感がまたボトムズの世界観に通じているようで、一人でその世界にひたるのも良い。苦いコーヒーが合うことだろう。
近づいてみると、3.8mとはいえ、やはり大きさに圧倒されるものがある。
コンクリートの土台で、数十センチ高くなってはいるものの、リアルなサイズ感は目の当たりにすると、より実感がわいてくる。
第一印象で抱いたイメージは、“リアルサイズ鬼”である。赤鬼や青鬼がいたら、このくらいの巨大感と威圧感を持っていることだろう。スコープドッグは緑鬼か。
巨大なスイカサイズと、思っていたよりはるかに大きなこぶしで、こんなもん振り回して暴れられたら、恐怖でしかない。
人なんか、かすっただけでひとたまりもない。
そして当然、スコープドッグ自体の、武骨な鉄のカタマリ感が半端ない。
ずんぐりむっくりなデザインなのに、この上なくカッコよく、まんま鬼の迫力がある。
こんなバケモノに生身で立ち向かうとは、メロウリンク、ホントに勇気あるな~。
そして、絶妙に施されたウェザリング(汚し塗装)が、ボトムズの世界観になじんでいて、思わず炎のにおいにむせてしまうところだ。
さりげなく入れられたアストラギウス文字も、実物大ならではのリアル感を醸し出している。
降着姿勢じゃなくとも、ステップを使えばコクピットまでよじ登れそうで、やはり良くできたデザイン。
そして、1/1ヘヴィマシンガンの巨大さがまたイイ!口径30mmだが、40mmボフォース機関砲ほどのボリューム感がある。
重さのせいか、銃身が気持ちやや上向きに曲がっているが、気のせい気のせい。
個人的な好みでは、ショートバレルのヘビィマシンガンを両手で腰だめに構えて、銃口のライフリングが見えてたらもっと良かったのにな~と思う。
あと、見てみて実感したが、30ミリではオーバーキルも甚だしいと思う。
装甲の薄さによる死傷率の高さからボトムズ(最低)の俗称が生まれているので、おそらく口径20mm、もしかしたら12.7mmクラスでも、薄い箇所ならスポスポ装甲を抜いていたことだろう。
それと、もっとリアリティーを追求するなら、口径7.62mmくらいの小火器が副兵装で付いていたり、戦車へのトップアタック用のミサイルや、多段弾頭のRPGを装備したりだろうか。
それか、スモークディスチャージャーの一つに装填された、対人地雷のシュツルムマインもいいかも。
(余談であるが、実はここらへんのアイデアは、すでに90年代の漫画「コンバットドール」で、うすね正俊氏によって表現されている。
「砂ぼうず」でも知られる天才作家であり、ミリタリーファンとしては、今でも彼を超える銃器表現(特にベトナム戦争以降の米軍装備)が出来る漫画家は出ていないと感じる。
地球外憑依型生命体が兵器と融合しつつ戦う「Eater」は、アイデアや偏差射撃の見事さといい、コンテンツとして今でも随一で、ハリウッド映画のプロットとしても通用すると思うが、袋小路に迷い込んでしまう彼の悪癖により、砂ぼうず共々未完となっている。)
と書いてきて、最近YouTubeで話題の「オブソリート」が、まんまそういったボトムズのリアル路線でやっているのを思い出した。
しかし、虚渕氏のエグゾフレームのアイデアも大変良いのだが、まだまだ“本家”ボトムズの魅力も、引き出され尽くしてはいないと思う。
たとえば、ロボット対ロボットの“歩兵”としてではなく、“騎兵”としてのボトムズが、そのまま現代戦で現れたらどうだろうか。
つまり、アーマードトルーパーvs他兵科の非対称戦を描くのだ。
全高4m内外の、むしろパワードスーツに近い、ロボットとしては最小クラスのアーマードトルーパーは、全高18mのガンダムと比べると、格段に小さい。
視線が通れば、数キロ先からでも容易に視認できるモビルスーツと違い、高架もくぐれてしまうアーマードトルーパーは、現代兵器の体系に組み入れられても、そのままでかなり活躍するに違いない。
言ってみれば、紛争地でよく見られる、テクニカル(重機関銃を載せた、トヨタランクルなんかのピックアップトラック)に、装甲が施され、もっと小回りがきいて、格闘戦もこなすのである。
アニメでは、数が頼みの歩兵的な運用をされているが、“装甲騎兵”とあるように、本来は騎兵的な運用が望ましいはず。
騎兵は脆弱性もあるものの、戦線両脇に配置されたり、予備戦力や遊軍として、戦果拡大時に絶大な打撃力を発揮する。
現代では、騎兵的役割は、戦車や歩兵戦闘車の装甲車輌、もしくは攻撃ヘリが担っているが、ここをATが受け持つことで描ける戦場も面白いだろう。
もしくは、A-10による近接航空支援の火力支援を、少数のアーマードトルーパーが受け持つのはどうだろう?
A-10同様、歩兵の守り神となるATなんて胸熱ではないだろうか。どちらも、屈指の“漢の兵器”である。
それも、ATは戦車より優れている兵科というのではなく、戦い方や状況でコロコロ戦況が変わるくらいがちょうど良い。
火力や防御力では戦車にかなわず、隠密性では歩兵がまさる。じゃんけんみたいな力関係があると、ストーリーも生まれやすい。
ドローンに対しては、戦車とあまり変わらず良い的かもしれないが、ドローン最強だと夢もキボーもないので、そこらへんは何とかしてほしい。
ボトムズは、なかなか主人公キリコから離れて魅力的な作品を作るに至っておらず(メロウリンクくらいかな)、ガンダムのようにアナザーストーリーが生まれていないが、リアルなミリタリーの切り口からもっと魅力を引き出してもらいたいものである。
あるいは、同じ高橋監督による「太陽の牙 ダグラム」の要素も、隠し味として良いだろう。
ファンが求めているのは、「ボトムズファインダー」のような、ボトムズっぽい軽い作品ではなく、冒頭の柳ジョージの曲のような、泥臭いボトムズ乗りの世界そのものであり、それは“戦場”に他ならないのだ。
ライトユーザーを取り込もうという、浅はかな目論見は二兎を追う者一兎も得ずであり、むしろ突き抜けてこそ、海外のミリタリーSFファンも興味を持ってくれるだろう。
実際、ニュージーランドのサバゲー仲間の間では、「ガンダム」より「ロボテック」の方が圧倒的に認知度が高い。
「ロボテック」は、マクロスとモスピーダとサザンクロス?の三作品が繋ぎ合わされた、海外向けのロボットアニメだが、世界中にファンが今でも多い。
彼らにとっては、現代兵器の延長線上にあると感じれる「ロボテック」のバルキリーやデストロイドの方が、ガンダムよりもリアルなのだ。
惜しむらくは、「ボトムズ」が当時、海外のそうしたアニメファンの目に触れる機会がなかったことである。
が、近年になって、ガンダムが海外でも見直される流れになってきているので、ボトムズも改めて海外に売り出すのもアリだと思う。
ハードSFを好む層は一定数いるし、ミリタリーSFのファンにも「ボトムズ」の訴求性は高いはず。
その試金石ともなったのが、図らずも「オブソリート」の、世界中で再生回数2000万回超えの評判なのではないだろうか。
コンテンツ力のあるものは、臆さずに海外での商売へと繋げていくべきなのだ。
だが、商機を逃しがちなのも日本らしいところで、「キャットシットワン」も短編CGアニメが2010年に海外でも大評判になったのに(NZのサバゲー仲間にもファンが多かった)、コンテンツ化するのに失敗している。
理由として、“熱い”期間での商品投入ができていないのが大きな原因の一つ。
他に思いつくものとしては、ATが乗り物としては、より不安定というのはどうだろうか?
まともにホイールダッシュしてターンするだけでも、車やバイクのレーサーのような、高度な技能を必要とされるといった描き方があっても良いのでは。
昔読んだボトムズの原作本に、キリコが転倒しそうなスコープドッグを、とっさに射撃の反動で立て直す描写があったが、とても痺れたことを覚えている。
映像作品では、転倒する描写は出てこないが、下手なコーナリングをするとブッこけるくらいが、映像としても面白いのではないだろうか。
自分でデッキを組んでパワーアップを図るミッションディスクも、組み合わせ次第で新たな可能性が生まれるという描き方だってあるだろう。
あと、これは「オブソリート」もそうなのだが、映像での手持ち火器の発射レートが高すぎる。
あれではすぐ弾切れになってしまわないか、観ていていつも不安になってしまうし、砲弾レベルの弾を撃っているのだから、もっと重々しさが欲しい。
MG42みたいに超高発射レートじゃないと、中途半端に高い連射速度では、どうしても豆鉄砲感が出てしまうのだ。
オブソリートでは、海兵隊のエグゾフレームの20ミリクラスでも、5.56mmの発射音にしか聞こえない。
ここは「プライベートライアン」で猛威をふるった、あの20ミリ機関砲くらいの迫力が欲しいところである。
あえて「ボトムズ」にも苦言を呈すと、被弾=蜂の巣になりがち。
一発の重さがもっと大事にされれば、貫徹されたかどうかや、内張りのライナーで止まったとか、チップの跳弾なんかでも、ドラマがもっと生まれる余地があるのでは。
と、思いつくままに述べてきましたが、要するに「サンライズさん、ガンダムだけじゃなくて、ボトムズも新作出してくれ!!!」というボトムズ野郎の心の叫びでした。
ボトムズも、あと二年の2023年で四十周年ですよ!新作作るなら今しかないでしょ?!