2019年の外苑いちょう並木通りでのF1デモランで、脳天ブチ抜かれてから二年。ついにレッドブルホンダがタイトルを獲得し、自分にとってはセナプロ時代以来のタイトル獲得マシンの凱旋を見に行くことが出来た。カラーリングは特別仕様の「ホンダありがとう」バージョン。いつものレッドブルカラーも良いが、やはり紅白ボディは美しい。
2020年モデルの実物マシンも見に行ったが、2021年モデルはエゲつないほどバージボード(操縦席横の金網みたいな空力パーツ)が進化している。
アルファタウリのAT02のバージボードはさほど変化が分からなかったものの、レッドブルのRB16Bのバージボードは、もはや金網や柵などではなく、良くできた伝統工芸品のようにオーラを放っていた。実物ならではの迫力。
たとえるなら、そう、“龍”のヒゲである。このマシンがフェルスタッペンの『俺の龍 by 湾岸ミッドナイト』だったんだと、妙に納得してしまった。
そして、その龍はフェルスタッペンを背に乗せて、見事にタイトルを獲得したのである。
そしてやはり、実物マシンを見るたびに感心してしまうのが、シートの傾きと、ステアリングの沢山のボタンやダイヤル類である。
あと、写真だと分かりづらいのだが、ほとんど寝ているような姿勢なのだ。背もたれと座面に注目すると、足を上げて仰向けで空を見るようなシートポジションで、首だけ起こして操縦している。あり得ない運転姿勢。
ちなみに、アルファタウリのステアリングは、ボタンがない仮のステアリングがついていた。
自分は古いタイプの走り屋上がりなので、本気走りの時はシートポジションの背もたれはほぼ直立がマスト。
前後位置もハンドルを回した時に、背中が浮かない位置まで前進させるので、相当窮屈な体勢になる。
その位置じゃないと、後輪が滑り始めるのを感じる腰のセンサーも一気に感度が落ちるのを実感する。
また、カウンターは滑り出してから当てるのでは遅いので、素早くステアリングを回すにためにも窮屈なポジションにならざるを得ない。
つまり、仰向けのような姿勢だと、何より車のインフォメーションが極めて分かりづらいんじゃないのかと心配になってくるのだ。
しかし、そんな曲芸のような体勢でF1マシンをコントロールし、ブレーキングで最大4G、つまり自分の体重の四倍、しかも主に首に負担が掛かるのにも耐えつつ、複数のボタン類を連動させセッティングを変えつつバトルするとか(長い。。)、F1パイロットはつくづく常人とは一線を画している。
しかも心拍数も、マラソンではなく、陸上競技の中距離走以上のレベルを二時間もキープするのだ。
そして、カペタの言葉のように、「頭は冷たく」ないと、極めて繊細なタイヤマネジメントをしつつ、目まぐるしく変わる状況に即座に対応など出来ない。
F1パイロットが、宇宙飛行士と並ぶ、世界最高レベルの頭脳集団であり、トップアスリートでもある所以といえる。
なかなかレース中の無線からだと分かりにくいが、自分がその立場になるのを想像してみると、どれだけブッ飛んだことをしているかが分かると思う。
あえて例えるなら、片手に電卓を持って、ほぼ全力疾走を二時間しながら、絶えずコラッツ予想(たま結びで有名w)の証明をし続けるようなものである。凄いのだけは伝わっただろうか。
また、アルファタウリの角田選手のヘルメットが彼の等身大パネルと飾ってあったのだが、スクリーンに残る飛び石の跡をみて驚かされる。
何故かアップすると解像度が低いのが申し訳ないが、この粗い画像で伝わるだろうか?わずか1ミリ2ミリ程度の極小の石でも、めり込むくらいの痕跡が多数残っているのだ。300km/h超の世界の荒々しさが少し窺え、ゾクッとした。スクリーンなしで顔面に直撃すると、確実に病院送りであるし、トップスピードで裸眼に直撃したら、ほぼ確実に失明してしまうことだろう。
日本のエアガンの法規制上限の1Jが、0.2gのBB弾で秒速100m/sなので、時速にすると360km/hとなる。2021年のF1の最高速が、330~340km/h超くらいだったかな。
飛び石の重さがどれくらいか分からないが、至近距離からBB弾の直撃を裸眼に受けても、かなりの確率で失明するだろうことを考えると、その威力はバカにならない。
ちなみに、BB弾を至近距離でゴーグルで受けると、ズレるかと思うほどの衝撃を受ける。
あとこれも面白かったのが、フロントウイングの翼端板の処理が、妹チームのアルファタウリの方がずっと複雑だった点である。
こういう違いで、両チームの設計思想の差を類推したりするのも楽しい。ちなみによく見たら、翼端板を上から見た断面図は同じ厚みではなく、先の方が若干厚い形状なのも興味深かった。
↑シンプルな翼端板のレッドブル
↑複雑な形状のアルファタウリの翼端板
たっぷりレッドブル、アルファタウリ両マシンを堪能した後、ホンダの純EV車ホンダeがあったのでこれも見学。去年来たときは外に展示してあったが、鍵が掛かっていて中に座れなかった。
正規料金はちょうど500万円。補助金でいくらか安くなるとしても、バッテリーが劣化した時を考えると、やはりまだ高い。
なかなか品の良い前席はともかく、後席はモーターが後ろにあるせいか若干狭い。ドアミラーがカメラなので、ドアを開けると映す映像も角度が変わり面白い。
スケルトンモデルも置いてあって、ハイブリッド車でもない純粋な電気自動車の、実質この状態で走れる圧倒的に少ない部品点数を見ると、EV車主流になると、廃業する自動車部品メーカーも多いと思われる。
そういえば、ホンダ本社ビルに入る前の青山一丁目の交差点で、ポルシェかと思って写真を撮ったが、よく見ると知らない車だった。ロータスっぽい?
シビックやベゼルやバイクも外にあり、今回は座れた。シビックなかなかえーね。思えば、最初の車はEGシビックだった。デザインは今でも通用するホンダ屈指のデザインだと思う。
しかし、VTECでもなく、マニュアルでもなかったので、走ることに興味を持つようになってから、日産U12ブルーバードATTESA四駆と交換してもらって、それ以来ホンダには乗っていない(ちなみに、このブルーバードでダートを走り込んで、様々なドリフトを覚えていった)。
だが、最初の愛車だったシビックがミッションだったなら、今でもホンダ党だったかもしれない。
当時ホンダF1第二期黄金期の、最期の輝きだった92年モナコグランプリのセナ対マンセルの、伝説の死闘をリアルタイムで観れたことは、2021年のフェルスタッペン対ハミルトンの歴史的なラストバトルを観れたことと等しく、とてつもなく心を揺さぶられることだった。
その後、マツダ車好きになり、ホンダには乗らなくなってしまったものの、鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎに行くと、モータースポーツを大事にするホンダのDNAをビンビンに感じる。車を買わないのでそこは申し訳ないが、ホンダがF1から撤退しても応援していきたい。
それからステージ前の椅子に座り、スクリーンの映像やクリスチャン・ホーナー氏たちのホンダありがとうメッセージを見ていると、だんだん人が集まってきて、席も満席となる。見渡すとお子さまも多い。
すると、ステージショーが始まり、ホンダのロボット、アシモくんが手をあげて登場。子どもたち大喜び。
このアシモくんも、見るたびに進化していて、意外に速く走り回ったり、若干ぎこちないものの、今日は片足ケンケンも見せてくれた。
ロボットによるロボットダンスの他、サッカーボールを正確に蹴るパフォーマンスもあり、最後は希望者がアシモくんと撮影会。
ただ撮影の際、アシモくんの前は通らないように前もって注意されていたのは、ゴルゴの後ろに立つと脊椎反射で殺されかける的なやつかも知れない。
最後に、レッドブルRB16BとアルファタウリAT02をそれぞれまとめて載せておきます。
来週三月頭が、鈴鹿サーキットでのホンダファン感謝祭のようですが、また外苑いちょう並木通り
でのF1デモランを、凱旋ランとしてやって欲しいものですね。
2021年レッドブルRB16Bホンダありがとうモデル
アルファタウリAT02