『「トップガン マーベリック」ミリタリーファンネタバレ感想』

『正直なところ、期待していたほどの没入感はなかったIMAXレーザーGT』


220608「トップガン マーベリック」

日本に二カ所しかないIMAXレーザーGTでの映画体験をしに、 池袋のグランドシネマサンシャインへ。


水曜日は割引きデイで、基本料金1200円に、 IMAXのプラス700円の合計1900円。


Is there anyone offer you a coffee?


いや〜、トップガンやっぱ最高!そしてここまで予算を使って、 あらゆる感情を揺さぶられるのは、 最早少数派となった限られた映画にしか出来ないことじゃないかと思った。


ということで、 ネタバレありでミリタリーファンから見ての感想を。

 

まず、幼少期からの団塊ジュニアミリタリーファンとして、最高峰の戦争映画といえば、総合では「プラトーン」でトップで、戦闘機映画としては「トップガン」で異論はない。

 

といっても、「プラトーン」も「トップガン」も映画館で観てはいなく、今でもスクリーンでやってくれないかと思う。

 

プラトーン」はまた別の機会に触れるとして「トップガン」であるが、実は「トップガン」よりも先に観て、今でも同じくらい好きな作品がある。

 

そう、同じ戦闘機大空中戦映画ながら、B級映画のレッテルを汚名返上するどころか、続編が出るたびにショボくなっていった「アイアンイーグル」である。

 

単発戦闘機なら今でも一番好きなF-16が主役の「アイアンイーグル」は、捕虜になった父親を救出するため、高校生がF-16をかっぱらって中東の某国で大暴れするトンデモ内容。

湾岸戦争前に撮られた映画だが、敵司令官でラスボスが、フサイン大統領そっくりという設定と、なんとイスラエル空軍全面協力という異色の作品でもある。

 

そりゃ、そんなアレな内容ばっかりの映画がアメリカ空軍の協力なんて得られるはずもないのだが、現代航空戦で唯一のエースを生んでいるイスラエル空軍ならではの、キレッキレの反転降下とか実に見応えのあるシーンもあったのだ。

 

また、プロモーションビデオのような「トップガン」のスタイリッシュさに対し、持ち込んだ曲で気分を盛り上げる主人公という、違った音楽の面白い使い方もあり、良い意味でのB級映画の傑作でもあった。トンデモ映画ながら、ギャグやフィクションのバランスが絶妙だったのだ。

 

で、今回の「トップガン マーベリック」なのだが、個人的には前作のスタイリッシュ全振りの「トップガン」より、「アイアンイーグル」に近い印象を持つこととなった。

 

序盤にマーベリックが全員に奢らされる展開や、エッチして逃げ出す時に娘にハチ合わせするコメディパートは元より、トンデモ設定を貫き通すフィクション設定も、どちらかといえば「アイアンイーグル」寄りなのである。


マーベリックがテストパイロットでまだ現役というのにまず驚いたが、マッハ10で空中分解して、 多少焦げたくらいでピンピンしているのは、 まあ死なれても困るが草生えた。


極超音速では金属も燃え始める温度に達するのだが、 頑丈どころではない操縦席周りが、 脱出カプセルにでもなっていたのだろうと納得することにした。
それでも、瞬間的なGで死んでしまうはずだけど。


まあそれは良いとして、 米海軍が極超音速機を開発する方がないかもと感じた。本来なら、 米空軍、あるいはNASADARPA(ダーパ: 米国防高等研究計画局)の領域の話であり、そこを冒してまで米海軍が有人極超音速機のテスト機を開発するとは思えない。

 

 


そして、原子炉を空爆しにいく話からして、 イスラエルイラク原子炉空爆が思い浮かんだが、 そこに至る経路をマッハループのように渓谷を低空飛行する設定は 、まさかの傑作戦闘機マンガ「エリア88」を彷彿とさせ、個人的にブチ上がる。


また、訓練中の事故により、マーベリックが一旦ミッションから外されてからのチャレンジは、 この映画最大の見どころとなっている。そう、 予告映像のあのシーンである。
本編はノーカットの一連のコックピット映像で、 しかも映画館の大スクリーン。 ここに至ってはもう映像体験ではなく、戦闘機に同乗しての、 完全にアトラクションとなっていた。


マーベリックのように心拍数が上がり、 身体に掛かるGすら感じる極限の飛行( 専門用語では一連の飛行をフライトエンベロープと言うらしい。 飛行封筒?)を経た後に、最高のカタルシスを得るのである。


身体に直接響く重低音が、実に良い仕事をしていると感じた。 これはやはり映画館ならではの迫力。


それだけでも、もうお腹いっぱいくらい満足だったのだが、 いよいよ実戦となり、さらにまさかのマーベリック被撃墜!

 

 


まあ、ね。原子炉爆撃して、山肌に沿って垂直上昇後は、 事実上ノープランだったので、 それまで沈黙していた山脈上の対空ミサイル群の大歓迎となったの である。全滅となっていてもおかしくない。
各機すぐにチャフもフレアも撃ち尽くしたので、 逆によく囮となったマーベリック機一機の損失で済んだなと。


これが、もし米軍の教科書通りだったなら、という仮定の話なら、 基本夜間攻撃であり、まずF/A- 18Gの対レーダーミサイルでレーダーと対空ミサイルを無力化し (敵防衛網制圧:SEAD)、巡航ミサイル及びF-35ステルス戦闘機で重要施設破壊だろう。


しかしそれでも、本当なら対空機関砲群があるので、 相当の損害が出ることは想像に難くない。
そして何より、 米国議会がそんなギャンブル同様の軍事行動を容認するとは到底思えない。


とまあ、現実的な話になると、映画一つも作れなくなってしまい、 実につまらない。

 

 


が、フィクションとしてみてみると、F/A-18E/ Fスーパーホーネットのチョイスといい、 映画として成り立つなかなか絶妙な落としどころを見つけているの に気づく。


つまり、 マッハループのような低空飛行かつ高機動な曲芸飛行なら、 有名なブルーエンジェルスがスーパーホーネット使用ということもあり、あえてF-35を使わないという選択肢に、 一応の説得力を与えているのだ。


しかも、 作戦機に単座と複座の二種類のスーパーホーネットを使う点も、 単座のみのF-35ではない理由の一つとなっている。


また、F-14トムキャットを引っ張り出すのも、 イランではまだ後生大事に大切にしているので、 アリっちゃーアリなのだ。改修されてないA型であるにせよ。

 


それにしても、トムクルーズの超人ぶりが、 マーベリックのキャラクターとドンピシャで、 彼だけ時間の経過が異なっているのかと不思議で仕方ない。


アイスマン役のヴァルキルマーは実際に喉頭がんだったこともあり 、年相応に老け込んでいるが、 トムクルーズは色気もカッコ良さもまさに現役バリバリ。
20歳代の俳優に混じってのビーチアメフトでも、 肉体美に違和感を感じさせない。いや、改めてすんごいわ。


空戦機動(ACM)の実戦訓練でも、並み居るトップガンパイロットを相手に、 一番難しいガンキル(機関砲による撃墜)で一人残さず撃墜とか、 マジぱねー。


あ、でもHUD(ヘッドアップディスプレイ)や機関砲の描写は前作よりも劣化している印象。 20ミリバルカン砲は毎分最大6千発、 つまり1秒で100発も発射可能なので、 実際には画面で見える光る弾(曳光弾)の、 何十倍もバラ撒かれているのだ。

HUDも実際のリアル映像ではなく、チャチでセンスのないコンピュータグラフィックを何故わざわざ作るのか意味が分からない。

https://youtu.be/E6Xw8e7lFi8

 

YouTubeでガンカメラの映像を探してみたが、第二次大戦時のしかなく、あまり参考にならないかもしれないが、F-16が20ミリバルカンでブロンコを撃墜する映像があったので載せておく。

低速で逃げ回るブロンコに手こずるF-16だったが、50秒過ぎに一連射でようやく撃墜している。

 

さらに探すと、イスラエル空軍のガンカメラ映像が見つかった。1967年の六日間戦争からの現代航空戦の貴重な映像である。45秒あたりでガンキルが記録されている。

 

https://youtu.be/1ddiYLzpcVg

 

ミラージュの搭載機銃は20ミリバルカンではなく、おそらく30ミリアデン砲だろう。一発の威力はバルカンを上回るが、連射サイクルははるかに遅い。

それでもほんの一撃でミグ戦闘機は火だるまになっている。


昔みたベトナム戦争での20ミリバルカンの実際のガンカメラ映像でも、 一瞬の連射で敵機はすぐ火を噴いて撃墜されていた。
機関銃のようにダダダダと撃ちまくるというよりは、 敵機の予想位置に投網のようにバラ撒いて、 一撃で仕留めるものなのだ。
じゃないと、せいぜい500発程度しか搭載してないので、 すぐ弾切れになってしまう。


まあそれを置いておいても、グースの息子ルースターがF- 14の後部レーダー員となる展開は、激アツで目頭が熱くなった。


実際にはF-14自体が博物館モノの骨董品なので、 レーダーも作動していなく、 ルースターは後席に座っているだけなのだが、 敵機のミサイル発射をルースターが目視してからマーベリックが即退避機動に入る連係プレーは、グースとのそれを彷彿とさせた。
まさに“チーム”の阿吽の呼吸は、 あらゆる航空アクションでも屈指の空中戦描写もあり、 シビれまくるものであった。


敵機の東側最新鋭ステルス機スホーイ57が、 ロシア機得意のとんでもないマニューバ(落ち葉のような機動で、実際にフォーリングリーフと呼ばれている)を見せつけるのに対し、 マーベリックも負けじと翼端失速までさせて、F- 14の限界以上の機動で相手を出し抜く。


このあたり、マーベリックのパイロットとしての技能もだが、 瞬間的な判断能力が極めつけに優れているのが分かって興味深い。


米空軍で開発されたOODAループ<ウーダループ>を理解しよう PDCAサイクルに代わる?新しい行動理論とは? (1/3) - 株式会社リボルバー(Revolver,Inc.)(ウーダループ) は、よく知られたPDCAサイクルのような意思決定理論であるが、 極限状態においてミリセカンド単位で判断を迫られる、 パイロット用にずっと洗練されたものとなる。


しかもこのOODAループは、 対戦相手を念頭において開発されている点が、 他の意思決定理論と根本的に異なる点で、素早く回せる達人レベルになると、 相手の行動を先読みしたり、 ハッキングするみたいに罠にハメることすら可能になる。
単なる意思決定理論にとどまらず、 心理学の深奥にまで踏み込んだような、 洞察力も鍛えられることとなるので、 アメリカでは民間会社の幹部教育にも使われている。ちなみにサバゲーでも非常に役に立つ。


OODAループが海軍のトップガンでも教育に使われているかは推測の域を出ないが、 良いものはセクショナリズムを超えて採用するのがアメリカなので、きっと使われていることと思う。


このOODAループを説明する動画がYouTubeにあり、 しかも前作のトップガンの一場面を、 逐一OODAループのObserve(観察)、Orient( 考察)、Decision (判断)、Act(行動) の4つのサイクルに分けて解説してある(昔見た時は、そうテロップがはいっていたが、今見るとついてなかった)。

https://youtu.be/Jw51dMA9fMA

 

 

 


教官役のバイパーがA-4スカイホークで逃げるのを、 マーベリックのF-14が追いかけていく場面で、 バイパーはわざと誘い込むように逃げることで、マーベリックは巧妙にトンネルビジョンに陥れられていく。


ロックオン出来そうで出来ないことにあせるマーベリックは、 ますます僚機も後方警戒も忘れて深追いし、 いつの間にか背後に回り込んだバイパーの同僚教官ジェスターに、 撃墜判定される結果となる。

 


そして今作でも、 劇中で今度はマーベリックがOODAループを有効活用したと思われる場面が、 何度もあった。


あえて実戦にのみ触れるなら、 まず二機のスホーイ57が接近してきた時に、 味方を装うことで油断させた場面である。 これによる不意打ちでまず一機を撃墜。


残ったのは一機だが、機体の性能差は実はとんでもない差がある。


第四世代機のF-15F-16と、 ステルス機となる第五世代機F-22ラプターやF- 35ライトニング2がガチの演習で対戦した結果は、 第四世代機損失約100機に対し、 ステルス機はほとんど損失を出していない。


まあそれは、 目視距離外から一方的にミサイルで撃ち落とされたのが大半で、 目視距離でのドッグファイトではF-16がF- 35を撃墜した例もある。


しかし、F-14アビオニクスは、同じ第四世代機であるとはい え、アップデートを繰り返しているF-15F-16より格段に古く、ましてやステルス機とでは、 大人と子どもより差があると言っても過言ではない。


しかし、マーベリックは少しも心を折られることもなく、 がっぷり四つでスホーイ57との空中戦に果敢に挑んでいく。
これがもし目視距離外(BVR) から撃ちっぱなしミサイルを撃たれていたら、いくらマーベリックでもお手上げだっただろう。


が、まさに刀折れ矢尽きるまでの死闘が繰り広げられ、観ている観客もマーベリック同様にヘトヘトになってしまうほど。


そしてついに前述のように、F-14を翼端失速させる限界以上の必殺マニューバで、 相手のOODAループを出し抜き、撃墜を果たす。

 

 


このあたりのマーベリックの鉄人のような人物造形は、個人的には第二次大戦のドイツ空軍の不屈の英雄ルーデルを思い出した。


というか、そんな映画のフィクションの大活躍と比べても、戦車500両以上、戦艦撃沈、 片足を吹き飛ばされても平気で帰還したルーデルの方が、 ウソっぽく聞こえるのが怖い。

 


さて、戦史になると長くなるのでこの辺で。


ようやく敵を排除したマーベリックとルースターだったが、さらに一機のスホーイ57が現れる。


もはや残弾わずかで絶体絶命。


そこへ騎兵隊のごとく現れるアイツ。Gメン?太陽にほえろ? いや、ハングマンだよ!


。。団塊ジュニアより下の世代には意味不明だったろうが、 満漢全席のように、 全てのキャストにスポットライトが当たるニクい演出。 サイコーです。

 

 

 

 


ということで、 ミリタリーファンの立場から見た感想をつらつら書いてみました。


IMAXレーザーGTどころか、IMAXも初めての体験でしたが、迫力はあるものの、正直必ずIMAXレーザーGTで観なければならないなーとまでは感じませんでした。


もしかしたら、最後列の端の方で観ていたのも影響しているかもですが。


それより、椅子自体が動いたり振動し、風や水しぶき?まであるとかいう、 IMAX4DXの方がアトラクションとしての楽しさは上なのではないだろうか。 同じ航空ファンのヨーヘイさんも4DXを絶賛していたし。


ただ、一般人有名人問わず大人気の「トップガン マーベリック」の感想で、今のところ一番面白く、かつ共感したのは、ダイアンの津田のそれでした。ダイアンやっぱ面白い。


それを最後に貼って、締めくくりにしよう。いや〜、やっぱ映画っていいもんですね〜〜(ᵔᴥᵔ)

 

https://youtu.be/6QW2aKq5DiU

2分半くらいからですが、オープニングトークもメチャ面白いです。

 

オマケ

津田さん、ビリケンさんに似てるな〜と前から思ってて、ついに発見この表情。

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ザ・リアルビリケンさん。ブスかわ(๑˃̵ᴗ˂̵)なでなでしたい。