さあ早仕舞いの金曜日恒例の社会科見学。仕事を終えて有楽町探検に出る。あのイチローがチャーハンをよく食べていたという、交通会館の中華料理屋、その名も「交通飯店」が、2022年三月末で閉店となるそうなので、それは一度は食べに行かないと、と思ったのだ。
しかし、三月最後の金曜日ということもあり、ちょっとスマホのプランを訊きに寄り道したら、食べれないことになってしまった。
通常は、中休みがあって17:30営業再開なのだが、今日は通しで営業していたみたいで、17時前に並びに行くと、この日の分の整理券が全部なくなってしまっていたのだ。
てか、並んでから整理券があることを知った。ザ完敗(*っ´Д)っ
まあ良い。我輩には最終兵器、広島のカピバラさんに教えてもらった広島県民ぞっこんの「むさしのにぎり」がある。
あの有吉弘行もオススメという、お握り。さぞかしブチ旨グルメなんじゃろう。
それがなんと、有楽町駅から目と鼻の先の広島物産館TAU(たう)にあるらしい。むしろ、こっちが主目的ではあるまいか。
しかし、今いる交通会館のレトロチックなビルヂングも、まんま昭和の空気感といい、迷路のような造りといい、かつて広島県福山市駅前にあった繊維ビルを思い出して楽しい。
そういえば、もう十五年くらい経つだろうか。尾道サバゲー掲示板のみんなで、忘年会だか新年会だかに行ったっけ?
繊維ビルの、九龍城のような雰囲気を楽しみながら食べたドテ焼きが懐かしい。
もうすでに繊維ビルは無くなって久しい。福山もすっかり変わってしまったのだろうか。地元岡山にも、もう三年半も帰っていない。
そして、今日初めて中に入ったが、この交通会館もしばらくすると解体されてしまうのかもしれない。味のある雰囲気を醸し出しているだけに、実に惜しい気がする。
人はいつも、失ってしまってから、大事なことに気づくものだろう。
でも、その時には、もう手遅れであることが常なのも、人らしいといえば人らしい。
そんな中、交通会館の地下をさまよっていると、小部屋で油絵の個展をやっていた。風景画に惹かれて入ってみる。
10畳ほどの小ぢんまりとした飾りっ気のない部屋三面に、風景画が十枚少し飾ってある。
知らない田舎の景色だけれど、この空気感にしろ、遠くの少しまぶしいような光の加減にしろ、自分の心の中にある岡山の田園風景そのものなのだ。
忘れていたはずの、坂道で自転車を押しながら、ふと見た里山の秋の情景が、中学時代に見たその時のように、空気感と共によみがえってくる。山々の匂いまで感じる気がするほど。
季節的にも、この三月末という季節の変わり目は、山が春で目覚めるような、独特の匂いがするものだ。
つくし食べたいな〜。野菜?植物?の中でつくしが一番おいしいと、春になるたび思い出す。
しかし、東山魁夷先生の絵が日本画で一番好きだが、この個展の笹山勝雄さん(親しみを込めてそう呼ばせて頂きます)の絵も、負けず劣らず良い。
東山魁夷の絵が、日本人の精神性を描いているのだとしたら、笹山勝雄さんの絵は、日本人の心のふるさとを、絵の中に保存してくれているのだと感じる。まあ、都会の人はどうか知らないが。。
来場者はパラパラと自分を含めておじさんばかりで、だからこそ居心地良く観賞していたところ、来場者のおじさんが、笹山さんらしき方と話し始める。
どうやら、去年も来たことがあるようで、懐かしい風景について話している。なんでも、この絵の景色のモデル?は群馬にあるらしい。
な、なんだってー!つい話に参加させてもらう。
話によると、笹山さんが群馬県安中市在住で、その里山の風景を主に描いているそう。
その来場者のおじさんと、絵の持つ不思議な郷愁で完全に同意し、笹山さんもよく懐かしいと言われると笑顔。やさしい世界。
いや、この絵を携えて、老人ホームの慰問に行きたいと本当に思った。
さて、交通会館も満喫したので、最終目的地である広島物産館TAUへ向かう。TAUとは変な命名だが、おそらく「足りる」という広島弁からだろう。岡山県笠岡市も、お年寄りは「足(た)う」を使っている。
その道すがら、沖縄物産館と山形物産館もあったが、軽く冷やかしてスルー。
ほうほう、ホキを使った島テンプラに、タコライス。山形の方は、最上地方名物の笹巻きですとな。
まあ、広島県民まっしぐらの「むさしのにぎり」に比べたら、雑魚でしょ雑魚。我輩には「むさしのにぎり」が待っておる。「にぎりのむさし」かも知らんけど。
と、意気揚々と広島物産館TAUに入店し、ゆっくり見て回る。ほほう、しまなみ海道の一律レモン推しで、様々なレモンケーキが溢れかえっておるわい。
しかし、かえって無個性であると言わざるを得ない。しまなみ海道といえば“鎧”と、一部歴史好きに有名な大三島の神社もあるので、兜型レモンケーキなんかあればキャッチーなのではあるまいか。ごく一部のコアなファンにしかアピールは出来ないが😐
お、カピさんが尾道の観光パンフレットと一緒に送ってくれた千鳥カレーも置いてある。ノブの絵柄が、楳図かずお先生の「まことちゃん」みたいでかわいい。しかもしっかりノブ。
それにしても、意外と高くてなんかもーしわけない。有難く頂くことにします。
「千鳥の出没!ひな壇団」はTVerで備後茶寮に行った回を観たが、一日一組限定の料理屋が尾道で成り立っているという事実は、地域の成熟度の一つの目安だろう。
がんすは売り切れだったが、思わず二度見してしまうものを発見。なんとサンショウウオ形のこんにゃく。頭手足に、しっぽもしっかりある。ぷよぷよの触感、つぶつぶの質感。キモ過ぎー!(誉め言葉)。
これがさりげなく鍋に入って煮込まれてたら、知らないとかなり食べるのに勇気が要るに違いない。しっぽだけ鍋から出てたりしたら、よけい驚くだろう。
それはそうと、広島県民のソウルフード「むさしのにぎり」である。このためにお腹を空かせたままTAUまでやってきた。ニワカお握り研究家として、興味深い研究課題である。
しかし、ぐるぐる広島物産館TAUの中を回ったものの、「むさしのにぎり」がどこにも見当たらない。鞆の浦のパンもあるのに何で??
やっぱりないので、店員さんに訊いてみる。
「あの~、むさしのにぎりのお握りがあるって聞いて来たんですが、どこにありますか?」
「??むさしのにぎりですか?それは広島の商品になりますか?」
「ええ、広島の人に教えてもらいました」
「。。さあ?初めて聞きました」
「???」
ええ~!?聞いてないよー!ハテナマークが飛び交う会話。店員さんが広島県民ではなかったのだろうか?いずれにしろ、無いものはない。
しかし、無いとなるとよけいに食べたくなるもの。広島に行くことがあれば、必ず「むさしのにぎり」に食べに行こうと心に誓った😙
TAUには二階三階もあり、広島風お好み焼きレストランもあった。
カープコーナーや、熊野筆なんかの伝統工芸品もズラッと置いてある。これは外国人向けのプレゼントとしても、かなり受けが良いに違いない。
初めて見て思わず笑ってしまったのが、呉市のゆるキャラマスコット、その名も「呉氏」。素晴らしいテキトー感と、程よい脱力感。
ゆるキャラは、つい力を入れて“かわいらしさ”を追求しがちだが、そういう下心が駄々漏れのゆるキャラは、なぜか総じてかわいくない。
今の時代は、いわゆるZ世代といわれる若者にせよ、他人の思惑に踊らされるのを、無意識のうちに感知して毛嫌いする人も増え、自分ももはやアレルギー反応まで感じるほどになった。
そこにくると、この呉氏のゆるキャラは、全国的にもかなりレベルが高いのではないだろうか。媚びてない感じが実に良い。
そして、同じ呉つながりということで、呉で建造された戦艦大和のグッズが。しかも個人的にかなりツボを押さえた商品で素晴らしい。
連合艦隊司令長官山本五十六の訓辞の色紙が千円で、ファイルが600円。大和好きのニュージーランドの友人に、ステッカー400円を買っておく。
さて、とっぷり日も暮れて、お腹もペコペコなので晩ごはん。Googleマップで、有楽町駅近くに「ジャポネ」があるのを発見。数十年の老舗のB級グルメ路面スパゲッティー、いわゆるロメスパの有名店。間違ってもパスタと言うなかれ。
十年以上前に来たことがあるのだが、少し迷いながら到着。十席くらいのカウンターだけの店だが、老若男女問わず、やはり人気がある。運良くすぐ座れ、シャンゴの横綱を注文。しょうゆ味の和風パスタ。通常サイズが600円で、ジャンボが750円、さらに大盛りの横綱が850円となる。
お腹が減り過ぎていたこともあり、常連顔ですまして横綱を注文したのだが、出てきた品を見て驚愕。文字通り、山盛り。
ナポリタンのロメスパチェーン店「パンチョ」ではメガ盛りイケるので、横綱もヨユーだろうと思ったのだが、甘かった。パンチョは鉄皿で、ジャポネはプラスチック皿なのだが、ジャポネの横綱の方がはるかに重い。
いわゆる何分で食べると無料とかの、バカ盛り系とまではいかないものの、中肉中背の日本人男性には、胃袋の限界値にかなり近いか、若干オーバーしているのではないだろうか。
まずはそのまま一口。ロメスパならではの、一旦冷蔵した柔らか目のスパゲッティと、ざっけない感じのあっさりしょうゆ味がとてもマッチしておいしい。
具は小エビ、豚肉、小松菜、トマト、玉ねぎ。にんにくは入ってないが、あっさりなのに旨みは強い。豚肉も下味がついてあって、小松菜のシャキシャキ感が良いアクセントになっている。
トマトはあまり存在感はないものの、このシャンゴというオリジナルスパゲッティは、なんてことはないのに、うまい。
が、山塊のような横綱シャンゴ、モキュモキュせっせと食べてみてもなかなか減らない。
やっと半分食べた頃、いきなり満腹感が襲ってくる。ヤバい。
ベルトをゆるめながら、途中でお持ち帰りは可能か探ってみる。
しかし、そんな文言はどこにもなく、まわりでそんなことを頼んでいる人も誰もいない。敗北を覚悟する。
それでもちまちま食べながら、粉チーズとタバスコで味変していると、食欲が復活してきたので、一気にラストスパート。次の満腹感がくると一口も食べれなくなるので、時間との勝負。
そして、「もう横綱は絶対頼まない」と泣きそうになりながらも、なんとか詰め込んで惨敗はまぬがれた。
食べ過ぎ、しかも炭水化物は良くないとは分かってはいるものの、サラッと食べても後でお腹が減るので考えもの。みんなどうしてるのだろう?
しかし、お腹ペコペコの時は、「いくらでも食べてやるぜ!」と意気込んではいるものの、いざ食べ始めてから残しそうになると、絶望感がハンパない。年取って食べ放題もあまり楽しめなくなってしまった。
満足感より、何がおいしかったかもよく分からないことに、後になって気づくことが多くなった気がするのだ。デザートを途中に挟めれるのが、食べ放題の唯一の利点だろうか。
それにしても、やっぱり気のおけない仲間や家族と、ワイワイ言いながら食べるのが一番おいしいもんだな〜と、今更ながら納得する。
早くコロナが終息して、地元にも気兼ねなく帰省できる日が来ると良いなと、改めて思った。
その時には、尾道や広島へも遠征して、「にぎりのむさし」も満喫してみたい。
え?「むさしのにぎり」??どっち???