#ステルス戦闘機#Pak-50#スホーイ27#超長距離対空ミサイル#S400#極超音速ミサイル#超高速核魚雷#シクヴァル#歩兵携行重機関銃#Kord#コルド#T-72#カスピ海の怪物#キンジャール#アヴァンガルド#TOS-1#サーモバリック#燃料気化爆弾#ブレベストニク原子力推進ミサイル
追記「ブレヴェストニク原子力推進巡航ミサイル」おそロシア度星4つ⭐️⭐️⭐️⭐️
https://youtube.com/shorts/XZzpx9xKEXY?si=6r8bdR7ng0_Ppd2T
ロシア製の極超音速ミサイルの有効性に疑問が持たれるようになったのが、ウクライナ戦争が始まって一年以上経過した印象だが、西側兵器にない発想のロシア兵器は、依然驚くべきものがある。
もちろん、『カタログスペックを発揮できれば』という注釈がつくものの、このブレヴェストニク原子力推進巡航ミサイルの、事実上無限大に近い射程距離もその一つだろう。
発射プラットフォームを問わず地球のどの地点にも撃ち込めるという汎用性の高さは、飽和攻撃及び、他の極超音速ミサイルとの併用で効果を最大限発揮するように感じさせる。
勝手に考察シリーズ「ロシア兵器編」おそロシア度 星番付
誕生日だった2022年2月24日、ロシア軍のウクライナ侵攻が始まった(団塊ジュニアの年男)。
今まであえてウクライナ侵攻について触れてこなかったのだが、少しミリタリーの観点から私見を述べさせてもらうことにしよう。
といっても専門的な知見に基づいたものでもなく、ふんわりとした主に開戦前までの知識と、驚くほど脆弱だったロシア軍の現状の理由を、思いつくままに勝手に考察してみようというものです。間違っていても、何の責任も取れません。むしろ、間違っていたら訂正するので、心ある方は教えて下さい。
さほど意識して考えてみたことはなかったですが、調べる内に、ロシア軍が超兵器を開発して西側に対抗しようとしている事実は、二次大戦時のドイツとかぶる部分があると感じました。
また、あるいは連邦の物量に、一騎当千のモビルアーマーで対抗しようとするジオン軍のようにも思えました。ってガンダム例えですが。。
「おそロシア度」という、おそろしく曖昧でいい加減な基準で判定していますが、ミリタリーフリークから見ての驚きや知的好奇心を、分かりやすく伝える基準としては、良かったのではないかなと思ってます。
また、もちろん、第二次世界大戦時に旧ソ連軍がどんな乱暴狼藉をしたかも知っているので、現在進行形で同じ蛮行を働いているロシア軍を、讃美しようとかの意図は一切無いこともご理解頂ければ幸いです。
我々、古参のミリタリーファンなりに見えるものもあると思うし、戦争の悲惨さや、兵器の怖さ・恐ろしさを知っているからこそ、平和の大切さが痛いほど分かります。
いくら平和を希求していても、願っているだけでは、それを踏みにじろうとする相手には通じないことが改めて分かったのが、今回のウクライナ侵攻でした。
あまつさえ、核使用や第三次世界大戦の恫喝まで、プーチン大統領は口にする始末。
アインシュタインの予言として、「第三次世界大戦に使われる武器は分からないが、第四次世界大戦では、石と棍棒でしょう」という言葉が残っている。
日本も当然他人事ではなく、敵国と核とに囲まれているという現実をよく理解し、侵略や核戦争を回避する具体的な対策を、国民の側からも議論する必要が出てきたと感じます。
それには、まず敵を知り、己を知ることでしょう。
それでも、一部の人には不快な思いを与えてしまうかもしれないですが、ロシア軍を理解する一助になればという思いもあり、書き進めさせてもらいます。
さて、まず前提として、ロシア軍はソ連崩壊後も長らく、アメリカに次ぐ世界第二位の軍事力を待つ国として認識されていたと思います。
それは核ミサイルだけではなく、通常兵器でも、ステルス戦闘機Pak-50をはじめ、非ステルスの第四世代戦闘機では、実戦で被撃墜記録のない西側のF-15を凌ぐとすら言われる、スホーイ27(NATOコード:フランカー)の系列機を多種多数配備している点だけでも、世界二位の軍事力と評価されるに十分でした。
陸軍、海軍(主に原子力潜水艦)も世界第一級の実力があると、まだまだ本当の実力の分からない中国軍と違い、一目置かれていました。
超長距離対空ミサイルS400
近年に至っては、西側も恐れる『超長射程対空ミサイルS400』の配備や(トルコが導入することになり、激怒したアメリカは、トルコのF-35購入を、開発から参加していたにもかかわらず白紙にしたほど)、空母打撃群の中核である米空母をピンポイントで撃沈できると言われる、『極超音速ミサイル』の実戦配備は、どちらもまさにゲームチェンジャーとしてセンセーショナルなものだった。
何故なら、世界最強のアメリカ軍の軍事ドクトリンが、根底から揺るがされることとなったからである。
まずステルス探知能力まであるらしい超長射程対空ミサイルS400の登場により、アメリカが制空権を確保する要である、空中の目であり司令塔である、早期警戒管制機AWACS(エーワックス)の行動が大きく制限されるようになった。
もともと、旧ソ連時代から、ロシアの対空ミサイルの射程は、西側兵器のそれを凌ぐほどであり、中学の時どハマりしていた懐かしのゲームのメガドライブ版「スーパー大戦略」でも、ソ連のガモフやゲインフルの広射程は実に厄介ものだった(ワルシャワ条約軍には供与されなかったソ連の宝だった)。
対空ミサイルを排除しないと、高価な航空機が活動できないのである。これは実際の戦場にも当てはまる。
S400も実際の射程は、西側の主力対空ミサイル「パトリオット」のそれをはるかに上回る、二倍の400kmと目されている。
ちなみに、東京の皇居から富士山の直線距離がちょうど100kmくらいである。
さらに、視界外射程(beyond-visual-range、 BVR)ミサイル(BVRAAM)とは20 nmiノーティカルマイル (37 km)またはそれ以上の有効射程距離を持つ空対空ミサイルといわれるので、東京から富士山までの百kmでも、相当の射程距離ということが実感できる。
400kmの射程は、東京と大阪の直線距離に相当するので、ロシアの対空ミサイルS400が、いかにトンデモない超長射程か、分かってもらえただろうか?
事実上、マレーシア航空の旅客機を撃墜したことで悪名高いS300も、さらに射程が延伸されたS400も、これまでの既存の対空ミサイルに対し、もはや“戦略”対空ミサイルと呼べるほどの脅威を、西側に与えているのである(戦略と戦術の違いは、たとえば囲碁と将棋の違いと言える)。
しかも海上のイージス艦と違い、陸上ではカモフラージュによる隠匿性が高く、発射前にレーダーを使われるまでは、偵察衛星だけでは発見が難しい。いかに高性能なAWACSにしろ、近づかないのが一番なのである。
ちなみに、S400のシステム一式はトータルで五千万ドル(60億円以上)といわれ、東側のヘタな戦闘機一機の価格を凌ぐほどである。
陸上兵器としては高価な、西側の戦車ですら、数億円ほどなのだ。ケタ外れに高いS400のその価格からしても、星4★★★★☆おそロシアである。
極超高速ミサイル
また、もう一つの超兵器である、マッハ10を超えるとも言われる飛翔速度を誇る「極超音速(ハイパーソニック)ミサイル」は、核ミサイル(厳密には弾頭部分)と通常ミサイルの二種類に大別される。
これは探知自体が難しく、また不規則な軌道のウェイブライダー型の弾頭も、巡航ミサイルタイプの極超音速ミサイルも、基本的に飛翔速度が速すぎて、従来の西側の対空兵器では、どちらも迎撃が現実的に極めて困難なのである。
さらに、近接信管ではなく、直撃させないと無力化は難しいので、著しく撃墜の難易度は上がっているのだ。現時点では不可能と言っても過言ではないだろう(その後驚くことに、パトリオット対空ミサイルで撃墜できることが確認されることとなった)。
極超音速滑空弾頭「アヴァンガルド」に、極超音速巡航ミサイル「イスカンデル」「キンジャール」と、それぞれ面白い名前。
「アヴァンギャルド(前衛的)」のロシア語読みに、「キンジャール」は両刃の短剣となっている。
「イスカンデル」は宇宙の果てまで飛んで行きそうな名前なものの、実は航空機搭載型超音速巡航ミサイル「キンジャール」のただの通常型らしい。
極超音速滑空弾頭と極超音速巡航ミサイルは全然別物なのだが、ここでは主に後者について触れることにしよう。
極超音速ミサイルの運動エネルギーと威力は、速度の二乗で威力が跳ね上がる物理法則によって、同じ質量・炸薬のミサイルでも、既存のミサイルとは一線を画すものと想像される。
そんな、一発で空母すら撃沈可能、かつ迎撃不可能な、千km超(最大三千kmとか言われている)もの長射程の巡航ミサイルが、対艦ミサイルとしても使用可能というのである。
にわかには信じ難いが、実際に万が一アメリカとロシアが、直接事を構える場合(そうなるともはや第三次世界大戦待ったなしだろう)、アメリカは虎の子であるAWACSと空母を、迂闊には前線に出せないことを意味する。そうなると飛車角落ちで将棋をするようなものである。
しかし、アメリカの国防総省が、ウクライナで地下弾薬庫破壊にキンジャールが使われた件で、破壊に成功したすぐ後に、「軍事的に実用性がない」と公にコメントしたが、キンジャールが空母に対して使われる可能性こそが危機であり、どうも腑に落ちない。
兵器の真の実用性(コンバットプルーフまたはバトルプルーフ)は、何でも起こり得る過酷な実戦で使用されない限りは、誰もあらかじめ知りようがないからである。
つまり、実際に空母に対して撃ち込まれてもいないのに、「軍事的に実用性がない」と言い切るには時期尚早と言える。
よっぽど諜報活動によって、見掛け倒しの性能であると判明しているか、あるいは逆に、いまだ極超音速ミサイルが開発途上であるアメリカの、苦しまぎれの「効いてない」アピールのようにも思える。
極超音速ミサイルについては、中国と北朝鮮も自称実戦配備レベルだとアピールが盛んだが、これも戦場で使われてみるまでは分からない。
ただ、戦艦大和の46cm主砲の1トンを超える砲弾が、数km上空から落下してくる運動エネルギーを、極超音速ミサイルは凌駕していると考えられるので、それが迎撃不可能というだけで、星5★★★★★マックスおそロシアと言える。
【2023.8月追記】
ウクライナの報道によると、アメリカから供与されたパトリオットミサイルにより、キンジャール極超音速ミサイルの撃墜に成功したとのこと。
飽和攻撃されると依然厳しいだろうが、現行の対空ミサイルである程度対応可能なことが分かったことは、大きな試金石になったと思われる。
一言で言うなら、ロシアが主張するほどの脅威度は、キンジャールについてはそれほど恐れる必要がないことが判明した。つまり、化けの皮が剥がれたのである。
しかし、キンジャールは不規則な軌道を取らない直線番長ミサイルであり、未来位置も予測しやすいので撃墜できたと思われる。
が、ウェーブライダーで不規則な滑空をするアヴァンガルドに対しては、一番新しいパトリオットであるPAC3でも、依然として対応は難しいのではないだろうか。そもそもPAC3といえども、基本的には放物線を描く弾頭への対処しか設計段階では考慮されていない。
よしんば高機動な弾頭等へのプログラミングがされているとしても、アメリカ軍は極超音速ミサイルが開発途上なので、実戦訓練しようがないのだ。
そう考えると、極超音速ミサイルの潜在的な脅威度は、まだまだ未知数であると言えるだろう。
プーチンの立場になってみると見えるもの
問題は、西側でもまだ実戦配備に成功していない、いわばオーパーツのようなこの二つの超兵器を手に入れた、プーチン大統領の心理である。
長らく、西側諸国への巻き返しを虎視眈々と狙っていたプーチンにとって、通常兵器だけで完勝することすら可能とも思えるこのオプションは、願ってもいないラストチャンスと映ったのではないだろうか。
私には、ウクライナ侵攻が起こる前、国境付近で演習という名の挑発を繰り返すプーチンが、まるでクリスマスプレゼントをもらったばかりの、浮かれる子どもに見えた。
さらに、これも重大な事実であるのだが、世界二位の軍事力を持つにもかかわらず、ロシアのGDPは、韓国と大差ないレベル(というか負けている)なのである。さらに、中国と比べると、ロシアは中国の十分の一程度のGDPしかない。
経済規模と、軍事力のアンバランスさが、改めて浮き彫りになってくる事実である。
冷静になって考えてみると、世界二位のクラスの軍事力を、先進国トップ10にやっと入ったと浮かれている、お隣り韓国と似たり寄ったりの、もはやとても超大国と呼べない国が、この先も維持できる訳がないのは、自明の理である。
プーチンも、自国ロシアの国力の現実を知らなかった訳がない。
いやむしろ、自分が居なくなった後に、沈下していく一方であるロシアの行く末を考え、西側諸国を限定的ながら凌駕している現状の軍事力で、最後の賭けに出たのではないだろうか。
十年先にその優位性を維持できているか疑わしいのもあるからだ。
そう、それは誤解を恐れずに言うなら、「窮鼠猫を噛む」ように、真珠湾攻撃という乾坤一擲の戦いを挑まざるを得なかった、旧日本軍のようでもある。
もっとも、ウクライナ侵攻の場合、ロシアの安全保障において、地政学的にも緩衝地帯が必要だったとはいえ、大義は一切ない。
ましてや、この21世紀に至って、まるで第二次大戦時のような虐殺等の戦争犯罪を繰り返し、西側やウクライナの作ったフェイクニュースだと世迷言を並べるプーチンは、トランプ元大統領のような、陰謀論者かつ裸の王様と言えるだろう。
第二章 おそロシア兵器さらに深掘り解説
第二章は、世界二位の軍事力を誇ったロシア軍の、個人的に興味深いロシア兵器について述べてみる。
かつて、“おそロシア”と揶揄されたロシア特有のインターネットミームは、“中国の爆発ネタ”や、“お笑い韓国軍”と並んで、話題性に事欠かなかった。
しかし、湾岸戦争以降、西側戦車にフルボッコにされ、ブリキが代名詞となった感のある主力戦車T-72(T-80やT-90も事実上の派生型なので、一緒と思ってます)も、一部ではオブイェークト(戦車)神などと崇められ、西側戦車に対応するカウンターパートとしての存在感もそれなりに有していた。
が、被弾すると砲塔が丸ごと吹っ飛んでひっくり返る様から、「ビックリ箱(Jack in the box)」と揶揄されるT-72は、ロシア伝統の人命軽視兵器の象徴とも言えるのだ。
攻撃力こそ125mm滑腔砲で強力なものの(しかし貫徹力と遠距離砲戦能力は劣る)、砲塔内で砲弾にグルっと囲まれているロシア特有の自動装填装置の構造上、被弾すれば誘爆して、乗員戦死は必至なのだ。
つまり、もともと装甲が比較的薄めなのもあるが、そもそもダメージコントロールの概念すらないのである。
今回のウクライナ侵攻でも、T-72が被弾している動画をいくつか観たが、砲塔から火を噴いた後に前部の操縦兵が脱出することはあっても、砲塔内の戦車兵が脱出したのは一度もない。
T-72の戦車長と砲手は、貫徹されるとほぼ脱出不可能という、過酷な戦場の現実がそこにある。
砲弾の装薬は、爆薬と違って時間を掛けて(といっても一瞬だが)数千度で燃焼するので、誘爆すると爆発というよりは、例えるならドラゴンのブレス攻撃を至近距離で受けるようなものだろう。
即死ならまだマシだが、砲塔内が地獄絵図なのは想像に難くない。
西側戦車、たとえばアメリカのM1エイブラムス戦車はその点、乗員のいる空間と弾薬庫が、ボタンで開閉する隔壁で分かれており、また万が一誘爆しても、上方に爆風が逃げるので、乗員の生存性ははるかにマシである。まあ世代がそもそも違うのもあるが。
M1エイブラムスとT-72を比較した映像からキャプチャしたものになるが、いかにT-72が小さいサイズ(特に砲塔)か分かるだろう。
コンパクトなことは被弾率の低下につながるが、コンパクトな分、装甲も薄い。ましてや、意図的に性能の低下が図られたモンキーモデルでは、複合装甲がオミットされた紙装甲モデルもある。
まあ、複合装甲があっても、爆発反応装甲があっても、モグラ叩きみたいに片っ端から破壊されまくっているロシア軍の現状から鑑みるに、それでも次世代戦車T-14アルマータを頑なに投入しないのは、T-72系統の在庫処分の意味もあるのだろうか(実際のところ、T-14アルマータは半導体不足もあり、数が全然そろってないらしい)。
アメリカも定期的に世界各地で在庫処分しているが、今回は歩兵携行対戦車ミサイルのジャベリンが主である。
その在庫処分に付き合わされるロシア戦車兵は、被弾したら脱出もままならない現実をどう受け止めているのだろう。まさに鉄の棺桶ではないか。
ということでT-72は、当たらなければどうということもない思想で作られた戦車なのだが、当たればひとたまりも無かった哀しき主力戦車なのだ。
あな星4★★★★☆おそロシア。
ロシア軍びっくりドッキリメカ
何より、ロシアには西側諸国の兵器体系からはかけ離れた独自性があり、イギリス軍の残念兵器とも違う、真のトンデモ兵器を生み出す土壌となっている。
「カスピ海の怪物」しかり、超高速核魚雷「シクヴァル」しかりである。
カスピ海の怪物は見た目のトンデモ度に比べると、おそロシア度が低いので今回は触れないが、超高速魚雷シクヴァルは、後継兵器も含めてナカナカ香ばしいので、かいつまんで解説させて頂こう。
超高速核魚雷「シクヴァル」
まず高速魚雷といってどれくらい速いかであるが、実は新幹線をはるかに凌ぐ、370km/hという想像すら難しい雷速である。
西側で広く配備されているMk.46魚雷で約80km/hで、最新のMk.50でやっと100km/hを超えたくらいなので、シクヴァルのトンデモなさが際立っている。
車で300km/hの壁を超えるには、巨大な空気抵抗を突き破る大馬力とエアロが必要だが、より抵抗の多い水中で300km/h超を出せるとか、雷跡も含めて全く想像もできない。
メカニズムとしては、魚雷先端から放出する泡で、スーパーキャビテーションという抵抗の極端に少ない層を魚雷の外側に作り、ロケットの推進力で水中を突き進むというもの。
さすがに高速すぎて精密誘導は苦手なようで、ロシアの考えた運用方法は、戦術核を搭載した核魚雷として、艦隊丸ごと殲滅するというもの。ガトーのガンダム二号機かよ。
さらに、複数のシクヴァルを封入し、別にセンサーを搭載した「機雷型」のタイプもあったということで、誘い込まれて海底から300km/hを超える核魚雷をいきなり撃ち込まれたら、さしもの米海軍もお手上げだったに違いない。
そしてシクヴァルには後継機もあり、最終的には、水中でも500〜600km/hに達するというのだから、リニアモーターカーより速い。
これをトンデモ兵器と呼ばずして、何をトンデモ兵器と呼べるだろう。
ということで超高速核魚雷も、星5★★★★★マックスおそロシアとしておこう。
歩兵携行重機関銃「Kord(コルド)」
個人的にロシア軍の小火器には、昔から好奇心を刺激されることが多かった。
精度は多少劣ろうと、マークスマンライフルの先駆けとなったドラグノフ狙撃銃や、特徴的な瞬時二点バースト射撃機構を備えた次世代アサルトライフルのアバカンも記憶に新しい。水中アサルトライフルや消音アサルトライフル等のオリジナリティにもロシア独自のこだわりが感じられる。
実はAKはさほど好きではないのだが、サプレッサーがデザイン段階から組み込まれた、消音アサルトライフルのAS VAL(ヴァル)と消音狙撃銃VSS(ヴィントレッツ)はかなりツボである。
サバゲー用のエアガンも欲しかったのだが、サプレッサー部分が実銃同様に鉄なので、持たせてもらうとフロントヘビーすぎてあきらめた過去がある。
少し脱線した。
さて、なかでもロシア軍小火器でおそロシアと感じたのが、12.7×108mmの大口径高速弾を使用する歩兵火器Kord(コルド)重機関銃である。
西側では、50口径12.7mm以上の大口径機関銃は、百年以上前から現役(!)のブローニングM2くらいしかなく、しかも三脚使用での陣地防御か車載機銃でしか運用されていない。
重すぎて分隊支援火器、つまり歩兵携行武器に向いていないのである。
しかしロシアだけは、この対物ライフルにも使われる、対人にはハーグ陸戦協定で使用禁止されている、どう考えてもオーバーキルな銃弾の、歩兵用手持ち重機関銃(重機関銃の定義としては違うものの)を作ってしまったのだ。
しかも、ケース長(薬莢の長さ)がM2が使用する99mmに対し108mmなので、火薬の量もマシマシでマグナム化している。
星3★★★☆☆おそロシアである。
最強アサルトライフル「ShAK-12(Ash-12)」
Kordについて調べていたら、実におそロシアな最新ロシア製アサルトライフルを見つけてしまったのでシェアしたい。
このアサルトライフル、何をもって最強かということだが、通常のアサルトライフルが5.56mmあるいは5.45mmが主流な口径に対し、なんと倍以上の12.7mmの大口径なのである。
50口径の歩兵用機関銃でも充分おそロシアなのに、ついにアサルトライフルまでやりやがったのだ。この発想力と実行力は西側にはないものだ。
さすがにアサルトライフル用で、フルサイズの弾丸ではないが、12.7×55mmの威力は防弾ベストはおろか、軽装甲車すら貫通するらしい。
亜音速弾であるのも重要な点で、サプレッサーによる消音効果が大きい。
12.7mmもの大口径弾が、どれくらい消音されるかは分からないものの、特殊部隊で使用されることで、発射位置をまぎらせつつ、障害物越しの敵を次々排除するという戦術も可能と考えられる。
ちなみに、弾丸自体が大きいので、ポリマー製のボックスマガジンは、10発か20発の装弾数のものしかない。かなり少なめ。
それでも威力だけなら、まさに最強といえるアサルトライフルなのではないだろうか。
そして、さらにおそロシアなのが、同じ12.7×55mmの弾丸を使用するリボルバー拳銃があるということで、同じ50口径でも拳銃弾のデザートイーグルより、はるかに強烈なリコイル(反動)が発生するのは確実である。
マテバのようなバレル低配置でリコイルは多少軽減されるにしろ、ガク引きや手首を痛めたりをしやすいのは想像に難くない。
そんなハンドガン、熊と決闘するつもりか、キリコ用か(上の写真はサバゲーのサイドアームとして買った、アーマーマグナムの水鉄砲。デカい)。
星4★★★★☆おそロシア。
また、今回のウクライナ侵攻でロシア軍が投入したのが、TOS-1サーモバリック(燃料気化)ロケット自走砲である。
燃料気化爆弾は、石油燃料等から精製された固体燃料をエアロゾル化して着火し、キノコ雲が発生するほどの大火力を有している。
その小規模の戦術核並みの威力から、燃料気化兵器(サーモバリックウェポン)は、貧者の核兵器と呼ばれる。
一方で核兵器特有の放射線や残留放射能がないため、通常兵器として認識され、アメリカ軍により、ISの武装勢力の拠点に対して使用されたのを映像で見た人も多いだろう。
ただし、大量の燃料を充填する必要があるため、どうしても巨大なタンク状にならざるを得ず、アメリカ軍の燃料気化爆弾「デイジーカッター」は、輸送機であるC-130ハーキュリーズから直接空中投下して使用される。
この燃料気化兵器の怖いところは、広範囲の酸素を一気に消費し尽くしてしまう点で、拠点にこもった敵も、酸素不足で窒息してしまうと言われている。
また、これまたホラーかつグロテスクな話だが、激烈な圧力変化は、人の内臓まで破壊してして死に至らしめてしまうのである。
それもあってか、アメリカ軍でもそう簡単には使用せず、あくまで特殊兵器の扱いで、他の西側諸国も運用している様子はない。
が、簡単な原理の兵器であり、コストも安価なので、通常兵器の体系に組み込まれることがあれば、使用される機会は増えそうである。あくまで倫理性に目をつぶればだが。
そして、今回のウクライナ侵攻で初めて知ったのが、ロシア軍がその燃料気化兵器を通常兵器同様に、“普通に”使用している事実である。
それがTOS-1サーモバリックロケット自走砲で、装軌車輌に小型化した燃料気化ロケット弾を24発も搭載し、抵抗拠点に連射で直接ブチ込もうという乱暴な兵器となっている。
凶悪な使用目的に対し、見た目はファミコンウォーズに出てきたような、ロケット自走砲のまんまで、ギャップが激しい。
運用方法としては、旧ドイツ軍が市街戦で使ったロケット自走砲戦車ストゥルムティーガーに近い。
ストゥルムティーガーは、角を曲がったところに敵トーチカがあれば、380mmロケット臼砲という極太の砲弾で、建物ごと木っ端微塵にしていた。
ウクライナでも、ロシア軍は戦車でも迂闊に近づけないウクライナ市街地の抵抗拠点に対し、この燃料気化兵器を用いて無力化を図るという使い方をしていると思われる。
実際の映像がこちら。衝撃波が見える凄まじさで、貧者の核兵器が過言ではないことが分かる。
この燃料気化兵器、ロシア軍での名称が怖い。
正式名「重火力投射装置」、別名『真空爆弾』。星5★★★★★おそロシア。
本当のおそロシアとは
さて、以上のようにざっと触れるだけでも、ロシア軍の個別の兵器群は特徴的で、西側兵器に対して優位性を持っているものもあるのだが、ウクライナ侵攻が始まってからのロシア軍の損耗度は、驚かされることとなった。
戦力では圧倒しているはずなのに、あまりにもロシア軍が脆いのである。
直近の4月13日には、大型揚陸艦に次いで、ロシア黒海艦隊の旗艦である、巡洋艦モスクワが対艦ミサイルによって撃沈された。
いくら古い艦艇とはいえ、艦隊防空を一手に担っていたモスクワが失われたのは心理的にも巨大な損失に違いない。
また、超兵器と思われた超長射程対空ミサイルS400が、ウクライナ軍のドローンにあっさり破壊される映像が、ウクライナ当局によって公開されたのも、大きな驚きだった。
前述のように、S400のシステムは五千万ドル、60億円以上とされ、ウクライナがトルコから購入したドローン「バイラクタル」が一機一億円程度と言われているので、本来相手にもならないはずなのだ。
仮にドローンの飛翔速度が遅すぎて、対空ミサイルに脅威目標として認識されないとしても、本来としては防空網は何重もの冗長性をもって警戒されているものだ。
たとえ対空ミサイルで対処が難しくとも、対空機関砲が配置されているはずなのである。
それがあるのかないのか全く機能せず(赤外線の白黒動画だったので夜間の可能性が高い)、五千万ドルという、陸上兵器としては極めて高価なS400がいとも簡単に破壊されてしまうのは、よほどロシア軍の統制がとれていない証拠のように思える。スターリン時代であれば、責任者は即刻処刑されていたに違いない。
実際、ロシア軍の高級将校が、4月10日時点で合わせて7名も戦死しているというが、開戦ふた月も経っていないのに、これも極めて異常な数字である。
ベトナム戦争で敗戦した米軍ですら、将軍クラスの戦死者は出していない。
最初、高級将校が次々と戦死しているという記事を見た時は、せいぜい佐官クラスの指揮官と思ったのだが、なんと全員少将と中将なのだ。ふつう将軍クラスの本当の高級将校は、前線にすら出てこないものだ。
結果的に、杜撰な作戦の後始末というか責任を、将校自らの命で贖っているとも思えるが、中には味方の戦車に轢かれて死んだ将校もいるという、ホントかウソか分からない情報もあるので、よっぽど情報が錯綜しているのは間違いない。
しかし、それにつけても、ロシア軍がここまで苦戦している理由は何なのだろう。
徴兵された新兵ばかり、つまり志願兵ではない寄せ集めの二線級の兵士が主力だったという話もある。
しかし一方で、志願兵で構成される精鋭である空挺部隊でも、反乱が起きたという情報もあるので、士気が低下していることからそんな話も出てくるのだろう。
さらに、現代戦において、補給・兵站はキモ中のキモであるはずなのだが、どうやらロシア軍は、旧日本軍のインパール作戦並みに杜撰な計画と見通しで開戦に至ったようなのだ。
当初、開戦三日で首都キーフ(キエフ)を陥落させる予定だったそうだが、ウクライナのゼレンスキー大統領の檄で一致団結し国民が徹底抗戦をしたため、ロシア軍は燃料弾薬もすぐに足りなくなった。
開戦序盤で、キーフ付近の空港へのロシアの空挺作戦が、輸送機ごと撃墜されて大失敗というニュースがあったが、それは空港を兵站の拠点にするという補給計画の柱がヘシ折られたニュースでもあったのだ。
結果として、陸路でのトラックによる補給では補給線が伸びすぎた上に、定石通りウクライナ軍のゲリラ戦術で補給線分断が図られ、三方からキーフに侵攻していた、北部と中部の方面軍はたちまち補給難に陥ってしまう。
すぐに食糧すら兵士自ら賄わなくてはならなくなったので、当然ながら略奪へと発展し、さらにエスカレートして虐殺まで行っているのが現状だろう。
軍隊というものは、暴力装置としては最強のものなので、当然強力な統制が必要であるはずなのだが、そのタガが外れてしまうと欲望のままに暴走しがちになる一例である。
ましてや、ロシア軍は第二次世界大戦時には、中央アジアとかの末端兵士はロシア語も話せなかった者が多かったというほど、カオスな集団だったのだ。
そんな集団の統制など取れるはずもなく、略奪暴行は当たり前であり、またあまりにも未開の土地から出て来た兵士は、時計のリューズの巻き方すら知らず、何本も腕時計を略奪しては腕に巻き、止まったら捨てていたという逸話が残っている。
今回のウクライナ侵攻も、そこまで低レベルの兵士ばかりとは思わないが、自分がどこにいて、演習か実戦かも分からない理解度のロシア軍若年兵が報道されているのは、嘘でなければという前提ではあるが、統制の取れている軍隊とも到底言えないだろう。
しかし思うに、ロシアが本当におそロシアなのは、語弊をおそれずにいうなら、二次大戦時から変わっていない、ロシア人自身の『命の安さ』そのものなのではないだろうか。
昔、脳ミソお花畑な日本の首相が、「人の命は地球より重い」とか言ったらしいが、地球より重い命の人間なんて一人もいない。
まあそれを言い出すと長くなるのであえて触れないが、命の重さや安さは、時代や国の状況によってマチマチである。
その命の重さや値段が、ロシアは相対的に今でも低いのではないだろうか。
日本でも太平洋戦争中は、高価な兵器の方が、赤紙で召集された兵隊より大事にされた。
しかし、その日本を含め西側諸国は今は違う。訓練に莫大な費用が掛かり、経験値込みで代替のし難いベテランは、高価な兵器そのものより重要視されるようになった。
が一方、ロシア軍では、戦車一つとっても人命軽視設計(強力ではあるものの、乗員に優しくない点で)が、大戦時のT-34の時代から、現在まだ事実上の主力戦車であるT-72やT-80、T-90まで、潔いほどに貫かれている(次世代戦車アルマータは知らない)。
旧日本軍の赤紙のように、兵員も補充可能な部品程度にしか捉えていないのだ。
さすがに二次大戦時、世界で比肩する国もないほどの死者を出した国だけのことはある。その戦没者の数は2660〜3000万人(当時のロシア人口約二億人の13.5%)。
実に日本の戦没者240〜310万人の十倍に及ぶ。
しかも、戦中の純粋な戦死者や犠牲者だけではなく、戦前のスターリンによって引き起こされたウクライナ大飢饉(ホロドモール)と、高級士官のほとんどが殺された大粛清による死者は、それぞれ1450万人と800〜1000万人と言われている。
これは戦中の犠牲者ではないので、戦没者数には含まれていない。
つまりロシアは、第二次世界大戦が始まる前に、それに匹敵するほどの、二千万人を超える死者を既に出していたのである。
合計すれば、四千万人を優に上回る死者を、ロシアはたった十年足らずで出したことになる。
四千万人といえば、関東首都圏の総人口に匹敵する。
それを、ことごとく死に至らしめるとは、なかなか震えてくる数字である。これぞ本当のおそロシアではないだろうか。
まるで家畜か畑の作物のように自国民を見ていたロシアの為政者の思考回路は、元KGBのプーチンに至っても、あまり変わってはいないように思われる。
そんな『命の安い』国の兵隊が、逆に『命を賭して戦う』ウクライナ軍に勝てないのは、精鋭にとって最も重要である、『士気』そのものが保てる道理もないからだ。
また、ロシア軍がどこまでも残虐になれるのも、同じく『命の安さ』に起因しているのではないだろうか。
他人に対してどこまでも冷たく残酷になれるのは、自らの正義を微塵も疑っていない場合か、自分の方が上等な人間であると心の底から信じている人種で、たとえばそれはナチスが想像に容易い。
しかし、ロシア軍はもっと未開で動物的で、まるで中世の暗黒時代を思わせるのである。
ナチスの理性的な狂気とまた違う、相手を人としても見ていない、動物としての欲望を剥き出しにした世界。
略奪こそが、兵士単位での戦争のモチベーションだったとしたら、とんだ先祖返りと言えるだろう(ロシアにはバイキングの血も流れている)。
そして恐ろしいのが、そのロシアを含む隣国が、日本に侵攻してきた場合、ウクライナと同じような惨劇が予想されることである。
しかも、自衛隊が日本を守るには、法整備から備蓄弾薬まで、足枷が多すぎるのだ。
この先の十年二十年で、アメリカと中国のパワーバランスが逆転する可能性の高さを考えると、残された猶予はあまりない。
ウクライナを他山の石とすべく、そうなった時にただ自衛隊に任せっきりにするのではなく、国民自ら国を守る視点で、何ができるのかを具体的に議論するのは、危機感の高まっている今しかないのである。
ただでさえ、日本人は「喉元過ぎれば」で平和ボケしやすいのだから。
最後に
さて、今回の「勝手に考察シリーズ」ではロシア兵器を取り上げたのだが、それにとどまらずついつい長くなってしまった。
冒頭でも述べたように、自分はミリタリーファンではあるものの、この文章はミリタリー讃美といった趣旨では書いていません。
いたずらに軍事や兵器を忌避するのではなく、たとえば隣の国が侵攻してくる可能性を考えた時に、相手がどのような兵器を使い、それに対してどう具体的な対抗策を立てるかを、民間レベルでも検証する必要があると、常々思っているからです。
それが出来てこそ、ミリタリーファンであることが、単なる好事家やオタクではない、本当の生きた知識になるとも思います。
ちょうど4/28に最終回を迎える傑作漫画『ゴールデンカムイ』で、フィクションながら土方歳三の言葉が泣けます。
「日本の未来のことを考え続けている
愛する家族や育てられた故郷
その延長にある日本という国土をどう守っていくか」
世知辛い現実に、明るい未来もなかなか見えてきませんが、それでも思考停止せず考えることで、少しでもより良い未来がもたらされることを願っています。