○0080がガンダム入門編に最適な理由


Mobile Suit Gundam 0080: War in the Pocket - Ending - YouTube

 

ガンダム0080

0080ガンダム入門編に最適な理由

名曲ぞろいのガンダムソングの中でも、このエンディング曲ほど泣かせるガンダムソングも他にないだろう。

 

子どもを主人公として、その視線から戦争というものを描いてゆく「ガンダム0800(ダブルオーエイティ)」は、ご都合主義では済まされない戦争の有り様そのものを描き切り、主人公アルを大人にしてもゆく。

 

知ってしまった以上、もうそこには戻れない。

 

そういった切なさや、後悔といった激情の果ての、諦観に似た無常感が、漂白されたようなフラットな歌声なのに、逆に痛いほど伝わってくる名曲。

 

アルは実際、どんな思いを抱いて、この写真に写っているんだろうか。彼はおそらく、誰にも何も語っていない。もちろんクリスにも。それがアルという少年の優しさだと想像できるのだ。

 

 

だからこそ、オープニング曲の、夏休みに入ったばかりのようなキラキラ感との対比が、観終わった後、さらに泣ける。

 

 

 

あえて言おう カスであると!!

 

さて、映画やドラマにとって、一も二もなく最重要なのは、“シナリオの出来”そのものだと考える。

 

 

ご都合主義は、無理なく伏線を回収したりといった、観客を納得させるに足る理由がなければ、シナリオの完成度をスポイルするだけである。

 

 

その点、取って付けたようなご都合主義が目につくのが、多くのハリウッド映画であり、日本のドラマ、特に最近のNHK大河ドラマだろう。

 

 

2020年NHK大河ドラマ麒麟がくる」は、最終回の良さでみんな手の平返しをしたが、ご都合主義でツッコミどころ満載の大活躍をした駒や東庵が、シナリオ、引いては作品そのものを破壊したのまでチャラにはできない。

 

 

 

同じく、ガンダム鉄血のオルフェンズ」も「ガンダム00(ダブルオー)」も、視聴者の反応に色目をつかいながらシナリオを変えていったがため、最後にはシッチャカメッチャカで酷い出来になり果てた。

 

 

どちらも素材は一級品であっただけに、小手先のテクニックを弄して素材を台無しにした責任は、ひとえに監督と脚本家にある。

 

 

子どもですら、本能的にウソを見抜くのだ。

 

 

だからこそ、富野由悠季監督は、たとえ子ども向けであっても、全身全霊を傾けて作品を作らなくてはならないと語った。

 

 

観客におもねったり、逆に観客の意表を突きたいがために、目先のアイデアにその度に飛びつくようでは、一貫性のある、本当によく練られたシナリオにはなりようがない。

 

 

 

ガンダム原理主義」と「ゼータガンダム至高主義」

 

2019年に四十周年を迎えたガンダム作品で、トータルで一番好きなのは「Zガンダム」だが、その味わい深さを感じれるまでは、スルメをかじるような、かなりの忍耐ある咀嚼が必要だと思う。

が、それだけに、何度観ても楽しめる、初代にも負けず劣らずの傑作となっている。

 

 

しかし恥ずかしながら、小学校高学年だった1985年のオンエア当時、真っ黒い画面に見えにくい黒いモビルスーツ、というだけで挫折してしまっている。初代ガンダムはあれだけ好きだったにもかかわらず。

 

 

それに冒頭は、主人公カミーユのエキセントリックな言動に拒否反応を感じる人も多いし、全50話はかなり長い。

 

 

特に序盤は、一話見逃すだけでも、ちんぷんかんぷんになりやすく、実際それで初見時は観なくなった。

 

 

その点、「ガンダム0080」は、全6話とちょっと長い映画といった感じで一気に観れる。

そして、ガンダム初見の一般人向けとしては、おそらく唯一の大人の観賞に耐え得る作品だと思う。

 

 

要するに、予備知識なしで楽しめる点で、普通の映画と同じ、「間口の広さ」を持っていると言えるのだ。

 

 

ガンダム作品の持つ、複雑なSF設定やニュータイプといった概念は、とても魅力的なものの、一般人にとって一つでも腑に落ちない要素があれば、それだけで楽しみを阻害してしまうことにもなりかねない。

 

 

ガンダム0080」ではロボットであるモビルスーツを、あくまで脇役である兵器としてしか描かなかったのがまず良かった。

 

 

それも、兵器そのものの残酷性や恐怖をただ描写するのではなく、車や鉄道等に対してもあるような、子ども特有の憧れからのアプローチは新鮮であり、自然でもあった。

 

 

シナリオの成功は、アルの目線から物語を描くことにした時点で、9割がた決まっていたと言っても過言ではない。

 

 

そういった敷居の低さとシナリオの完成度が、「ガンダム0080」を不朽の名作に押し上げたと言え、だからこそガンダム入門編として最もふさわしい作品なのだ。

 

 

 

余談だが、脇役でしかないロボットといえ「装甲騎兵ボトムズ」も浮かんでくる。

 

個人的にはガンダムより、むしろ若干好きなほどであるが、観る人みんなが楽しめる作品ではないし、ボトムズはそれでいい。

 

比べて優劣を競うのとは違う。ボトムズボトムズで、違う普遍性にまで到達しているからだ。

 

 

 

作画監督カウボーイビバップ川元利浩氏が参加していた

 

そして、他にもいくつか0080の見どころはあるが、やはりモビルスーツの動きの重厚感は、数あるガンダム作品中でもピカイチである。

 

動きの独特のタメが慣性重量を表現していて、それがモビルスーツの重さを感じさせている。

 

 

逆に、「逆襲のシャア」「ガンダムF91」は、動きが軽すぎてモビルスーツの重さを感じにくいのが残念。

 

まあ、宇宙空間や空中戦が主だったのも影響しているか。

 

 

 

また、ガンダムアレックスの動きで特に顕著だが、装甲板一枚一枚を意識して動かしているのがイイ!鎧武者感がある。

 

今ではCGモデルで描くので、装甲パネルを個々に動かすのも容易だろうが、セル画でやるのは大変だったろうし、相当センスが要るに違いない。

 

 

0083もメカメカしい作画が良いが、自分は0080の、モビルスーツの描線がシャープでクリーン、且つより重みを感じさせる作画が好みだ。

 

 

 

他にも「ガンダム0080」といえば、声優さんである。

 

もう一人の主人公バーニー役の辻谷耕史さんが、若くして鬼籍に入っているのにまず涙を誘われる。

 

シーブック役といい、人柄が出ているような、優しい声だった。ラストのバーニーのビデオメッセージとエンディング曲のコンボで、毎回涙腺が崩壊してしまう。

 

 

これも全くもって余談だが、Wikipediaで調べていて、辻谷耕史さんの奥さんは、Vガンダムのあの皆殺しのカテジナさんと、ケロロ軍曹を演じた渡辺久美子さんと知って驚いた。

 

 

いかん、カテジナさんにもケロロ軍曹にも、両側からイジられまくっているバーニーしか目に浮かんでこない。でもまんざらでもなさそう??

 

 

 

今ではベテラン大御所声優になった浪川大輔さんは、まだ子どもだった時演じたアルも、ビックリするほど超絶演技がうまい。見事な嘘つき小僧&オオカミ少年ぶりである。

 

 

あと、林原めぐみさんをはじめ、実力派声優が脇を固め、特におっさん役声優全員がいぶし銀の魅力を放っているのが、ガンダムらしいところでもある。

 

 

ただの荒くれ者部隊ではないサイクロプス隊もだし、戸谷公次さん(カクリコン役もした戸谷さんも若くして亡くなられていた)みたいな、ちょっと嫌味っ気のある渋いおっさん声は、富野監督作品には必ずいて、作品に重厚さを与えている。

 

 

さらに、ハマーンさま役の榊原良子さんがいくつかの脇役を演じ、なかでも宇宙港でのフランチェスカ便待ちで飲んだくれる女性は、彼女の演技力の高さの語り草ともなっている。

 

これも電話口の相手がシャアだったらと、何度も観ていると、違う楽しみ方もできてくる。

 

 

ということで、「閃光のハサウェイ」公開前盛り上げ企画で、「ガンダム0080」がバンダイチャンネルで無料公開してくれた感想になります。

 

 

やっぱり0080はサクッと観れて重すぎず、毎年観たくなりますね。クリスマスあたりだともっと感慨深いですが。

 

毎年バーニー追悼で無料公開やってくれませんかね。ご新規さん向けにも最適ですし。

 

 

 

さてさて、最後にご存知、同じ脚本家つながりで、「オネアミスの翼」を改めてゴリ押。。じゃなくてオススメしたいと思います。

 

脚本を書いた山賀監督をはじめ、スタッフ平均年齢24歳(!)の生まれたてのガイナックスがイロイロ度外視で作った名作です。

 

 

あの宮崎駿監督や富野由悠季監督が、自分たちには作れないと、文字通り大嫉妬した作品になります。

 

 

 

 

 

王立宇宙軍 オネアミスの翼

 

至ってフツーの青年が、奇跡もご都合主義も一切なく宇宙へ行くだけの作品ですが、何度も観れる独特の魅力がある。

 

人生の転機とかでも何故かよく観ていて、十回、いや二十回以上観賞しているものの、不思議と飽きない。

 

 

1987年初放映と、すでに34年も前のアニメ映画なものの、シナリオ・映像・音楽・声優、どれをとっても一級品であり、一切古びれません。

 

海外での評価が特に高く、思い出の作品特集では必ず名前が挙がってきています。

 

 

この作品の最大の魅力は、もう一つの地球(60年代くらいの文明程度の、全く違う文化をもった星)を、食器一つから言語・音楽に至るまで緻密に造り上げている点で、そのリアリティーが作品世界を息づかせています。そこにちゃんと存在しているのです。

 

 

その世界でのリアリティーを追求する姿勢は、「ガンダム0080」と通じるところがありますね。

 

 

エヴァンゲリオン」の庵野監督も作画でイイ仕事をしていて、ロケット打ち上げの伝説の神作画もさることながら、担当した戦闘シーンのリアルさは、少なくともこれを超える“戦争”は、アニメで描かれることはないと断言できます。

 

曳光弾フェチにとって、これ以上のご馳走はございません。ハアハア(*´Д`)

 

 

冗談はさておき、音楽は世界の坂本龍一で、これまた味のある楽曲が多く、オープニングとエンディングのエモさは何度観ても鳥肌モノです。

 

 

オネアミスの翼」のエンディングは、明確な答えがなく、酷評されることも多いのですが、自分はこれ以上は考えられないラストだと思います。見るたび、味わい深い余韻にしびれる思いがします。

 

例えるなら、とても質の良い懐石料理をたのしんだ満足感に似ています。

 

 

その意味では、分かりやすいハリウッド映画ではなく、ミニシアター系映画といった作品ですね。

 

最初は取っつきにくいですが、いったん作品に深くコミットすれば、至福の映像体験が待っています。

 

 

また、声優陣も豪華。中でも主人公シロツグを森本レオさんにしたのが絶妙な一手で、あの飄々として、トボけたとこがありながらも唯一無二の心地好い美声が、作品に幅と奥行きを与えています。

 

 

1/fの揺らぎがある森本レオの声は、楽器と一緒。

 

わびしさの中に癒しがあり、例えるなら、「コンドルは飛んでいく」のオカリナのように感じます。

 

 

https://youtu.be/Un7vh6S91uw

 

このね、森本レオのモノローグから始まって、坂本龍一のメインテーマ曲をBGMに、あちらの世界の歴史が味のある絵で描かれる一連のオープニングが、特に好きです。

 

 

 

そして、ラストのエンディング。宇宙で太陽の強い光に視界を奪われ、過去の記憶から人類の営みの歴史へと遡っていくシロツグ。

 

 

反転して無音になり、地表で収穫作業をしているヒロインを映し、そのリイクニがふと虚空を見上げたところで曲が始まる。

 

 

そして、やがてメインテーマへと戻っていきます。

 

 

 

人生ままならないことだらけでも、ちょっとだけ力をもらえるような、そんな作品です。