[初めに]
この本は、主に自分のサバゲー動画を元に、それを解説しながら、サバゲーの心理戦の部分にフォーカスしたものになります。
まずは一例から。右下でアンブッシュしているのが自分です。
本来ならすぐ見つかるところですが、一旦心理的盲点に陥ると、ギリーなくても敵から見えなくなります。ちなみに、相手はチームリーダーもしていたベテランです。
逆にベテランだからこその情報の取捨選択に、こちらがつけ込めた感じです。
↑あえて左のフィールドに対して、反対側のフィールド端の道にアンブッシュ。
丸見えの道側にはいないだろうという、思い込みを利用しています。
実際の動画。
他に心理的盲点を突いた例では、夜戦のナイフキルで鉄板だった戦法があります。
それは、「敵がクリアリングで部屋にエントリーしたら、必ず別の出口から出ていく」という行動を逆手に取ったものです。
何故だかよく分かりませんが、ほぼ確実に別の出口から出てくるので、入ったのを見届けてスニーキングし、出口脇に潜んでナイフキルしていました。1ゲームで10人以上ナイフキルしたこともあります。
元々は、ニュージーランドのサバゲー仲間に、ニンジャの戦術を取り入れた独特の戦い方を説明するために書いた文章がベースとなっていて、プレー動画で解説も入れたりし、2017年にKindleで電子出版したものになります。
"How Ninja Tactics work in Airsoft by Ninja St☮g: How he pulled off 503 melees in a year in 2015 (How Ninja Tactics work in Airsoft? Book 1) (English Edition)"(Cheerio Honneamis 著)
こちらから概要は読めれます: https://a.co/dNoB2Yx
それを多少加筆しながら、そのまま日本語にした形なので、ところどころ変な日本語になっています。
また、成功例を参照にしているので、どうしても俺強ぇー的なものに感じられるかもしれませんが、海外でも単独で通用した戦術を、誰かに伝えることができたら、サバゲーの世界がまた違ったものに見えるようになることを期待して書いています。
サバゲーは戦争ごっことも受け取られますが、サッカーやバスケットボール等に引けを取らない、高度な団体競技であるし、こと心理戦では、仮にも“生死”をかける点で、これほど非日常の心理の駆け引きをする団体競技は、日本には他にほとんどありません。剣道の試合が最も近いものの、1対1の戦いであり、サバゲーはやはり特別な非日常感を味わえる、日本では唯一無二の団体競技と言えると思います。
さらに、日本人はあまり自覚していませんが、サバイバルゲーム(海外ではエアソフト)は日本発祥のスポーツであり、世界で最も速く競技人口が増えつつある新しいスポーツでもあります。
しかし、サバゲーはプロ競技者もいない、成熟度ではまだよちよち歩きの競技であり、だからこそあらゆる楽しみ方が、プレイヤー次第であるともいえ、自分は、そういう、工夫次第で無限の可能性・楽しみ方のあるところがしびれるほど好きなのです。
「ニュージーランドでナイフキルを年間500人した」といっても、普通のプレイヤーは「ほーん。で?」で終わりですが、自分がその過程で得た、心理戦の知見は、とてもユニークなものであり、同時に実践したニンジャの戦術が、世界で通用した具体例を、動画を元に解説していきたいと思います。
海外のサバゲー参戦で得たもの
2008年から2017年まで、ニュージーランド南島最大の都市クライストチャーチに住んでいましたが、2014年暮れに、ふとした思いつきで素手で戦ってみたことがあります。武器がないのは少し不安ではあったけれど、感じたことのなかった圧倒的な解放感は、今でも鮮明に覚えています。
そして2015年のチャレンジとして、木刀メインで戦ってみることにしました。当初は自分のスキルの実証試験みたいなノリで、シャレでナイフキルした人にサインしてもらってましたが、40くらい番号を振ったリストがすぐいっぱいになりました。
これは自分でも予想外で、すぐ手帳を作り、サインをもらえなくとも動画で集計していったところ(もちろん重複はちゃんとチェックしてます)、最終的には2015年単年度で延べ503人のナイフキルに成功しました。少年プレイヤーはサインをもらっていなかったし、サイン漏れや動画撮りこぼしを入れれば、実数は550人は軽く超えるはずです。
ナイフキルは日本ではトラブルの元になる危険性から禁止されていることがほとんどですが、少なくともニュージーランドでは(2017年に行ったオランダでも)、そこまで近づいたお前はエライという感じで、逆に喜んでサインしてくれていました。
サインブックの一部です。〇にVがビデオでカウントした分です。〇に自がその日のナイフキルの数字になります。
ギネス記録登録はならず
残念ながらギネス申請は、サインや動画の証拠だけでは不十分ということで、証拠審査もしてもらえませんでしたが、このチャレンジを通して、自分の戦術がとてもユニークなものであるのを実感したし、たとえマークされていてもいつの間にか背後に回り込んでナイフキルするプレースタイルは、ニンジャとしてニュージーランドでは結構有名なプレイヤーとなれました。
「敵のガードをどう崩すか?」を心理面から紐とく
この本は、その当時の動画も織り交ぜながら、心理戦に特化した自分の戦術論を細かく解説していくもので、他に類のないものです。サッカーで例えるなら、他のサバゲー上達を目的とした動画や講習が、パスやシュートの上達を目標にしているのに対し、自分の戦術論は、主に相手の守備をどう崩して、あるいはつけ込んでゴールにもっていくかを主題にしています。
最後の忍者として著名な川上仁一氏の言葉にもある、「忍者の精髄は暴力ではなく、他人が無防備な瞬間をとらえること」を、意識的にも無意識的にも自分なりに追求した成果を、できるだけ丁寧に解説してみました。
そして、2015年にほぼ木刀メインで戦ってナイフキルを重ねていく過程で、敵の心理の隙をどう丁寧に突いていくかを試行錯誤する内に(そりゃ野戦だと見つかった瞬間に“ほぼ終わり”ですからw)、「敵の視界にモロに入っていても敵に認識されないことがある」という状態を学ぶことができました。
これはまさしく川上氏が言われるところの、「敵のまつ毛の上に立って生き残る。つまり、近づき過ぎれば逆に見えなくなる」という、認知心理学の一つの究極のサンプルだと感じます。
第一章は、そうした事例を、自分のプレイ動画等を参照に、主に単独で戦う際の、敵の心理に注目して解説しています。その上で敵を出し抜くための、米空軍のクイックシンキングを鍛えるトレーニング、OODA(ウーダ)ループについても詳しく説明しています。
第二章は、ニュージーランドの複数のチャンピオンチームから学んだ、世界レベルで通用するチーム、ユニットのトレーニングを、マインドセットの形成の仕方から、コンペで即応できる重要なポイント等、数を単なる足し算ではなく、掛け算にしていけるユニットづくりを主眼にまとめました。
以下がタイトルと序文、目次になります。
第一章目次
「サバイバルゲームで使えるニンジャの戦術とは?」
1、「技と戦術を磨くこと」それがサバイバルゲーム(以下サバゲー)をする主な目的でやってきました
2、サイレントキルが本分ですが、立ち止まらない強襲も好きです
3、この状況で何ができるでしょうか?想像してみて下さい
4、「盲点」と「分岐点」が注目すべき点
5、もう一つの「盲点」とは?
6、自分が出会った強敵たち
7、強プレイヤーになるための必須スキルとは
8、“戦場の霧”は、戦場での認識能力の不確かさを表した、最も有名な言葉
9、米軍のOODAループはとても役立つ意思決定理論
10、便利な状況認識能力も、時には盲点となる
11、キルレシオは気にしません。気にするなら電動ガンを使ってるでしょう
12、戦いの本質は「敵の嫌がることを実行することで、最小のリスクで最大のリターンを得ること」
13、「相手のOODAループを逆に利用し、状況のイニシアチブを取る」とどうなるか?
14、自分の攻撃力を最大化するには?
15、戦況を大きく左右するターニングポイントを自分でつくるには
16、“ターニングポイント(戦局の分岐点)”を判断するのは情報ではなく、本能的な直感が大事
17、「盲点」と「ターニングポイント」を自分自身で感じ取る本能を磨く
18、この道をゆけばわかるさ そうすれば 己のみの景色広がる
19、自分はさほどミリタリー装備のファンではないですが、装備品にこだわるのもサバゲーの楽しさの一つですね
20、最後に自分の夢について
第二章目次
・NZ唯一の複数回チャンピオンの実力のレベル
・マインドセットの重要性
「実戦トレーニング編」
1、分隊指揮官を毎回指名する
2、ゲームを復習する
3、重要な情報を共有する
4、動画を教材に議論する
5、コッキングガンでのウォーミングアップゲーム
6、結束の強いチームは、人数を足し算ではなく、掛け算にすることができる
[序]
まず一般的な忍者のイメージがあるものとして話を進めていきますが、サバゲーで忍者の戦術が使えるか?というと、かなり有用な部分もあると言えます。
一つ例をあげると、夜戦で自分が使う、実際の忍者の技で、頭を地面ギリギリまで近づけることがあります。
どういうことかというと、そうすることでたとえ敵から自分がまったく見えない状況でも、かすかに敵のシルエットが背景とのコントラストで見えることがあるのです。
夜目に慣れるために、通常自分は夜戦でフラッシュライトも使いません。自分の居場所をさらすリスクもそうですが、ライトを使ってしまうとそれに頼りがちになってしまうのが好きではないのも理由です。
ライトをスキルとして使いこなせるなら“アリ”ですが、まず何よりスキルが大事です。同じ理由でハンドガンにこだわった戦い方をしています。
そうそう、ギリ―スーツもずるいとは言われますが、ギリ―こそ使いこなすには腕が必要ですよ。動けば普通に見つかりますから。かすかでも不自然な動きがすぐ目につく人間の眼は、センサーとして本当によくできています。
それと、敵が真横2mを通過しても、微動だにしない心臓に鍛える必要があります。これがなかなか難しいのです。
でも、植生が合ってそれが出来れば、ギリ―は戦術の幅を格段にひろげてくれます。現代における、ニンジャ的装備とも言えますね。
↑の2枚は、2014年に初めてギリ―を使った時のです。2枚目で近づいてみると分かります。この時はブッシュ両側を敵が通過しても、バレなかったです^^
15nov2014 CSG VC ghillie ambush knifekill 2'55 ギリーでのアンブッシュ後ナイフキル - YouTube
ニュージーランドにいた頃、2014年か2015年のナイトゲームで、6人を一度にナイフキルして(海外のゲームでは、ナイフキルはヒットコールがないので可能となる)、一分隊を全滅させたことがあります。
文字にすると簡単そうですが、15分以上も敵を追跡した末のことだったので、実際は大変でした。
これを忍者の戦術をどう活かしたかで解説すると、実は追跡の途中で一度敵に探知されたものの、一旦距離を取り、その後細心の注意を払って再度10m以内まで近づき、味方との交戦が始まった瞬間に高脅威度の敵からナイフキルする各ステップで、細かいテクニックを織り交ぜて使っています。
たとえ探知されても、相手が疑心暗鬼になるまで待てば、優先順位は下がっていきます。さらに敵の意識が、完全に目の前の目標に向かった瞬間に、まさかの近距離から奇襲を掛ければ、意識外からの攻撃となるので、最大の効果が望めるのです。
最後の忍者、川上仁一氏の言葉、「忍者の精髄は暴力ではなく、他人が無防備な瞬間をとらえること」はまさに、かつて実在していた忍者という集団が、人間の心理をいかに繊細に読み解き、諜報活動等に活かしていたか、考えるととてもロマンがあります。
自分がちょっと聞きかじったような知識でも、サバゲーにさまざまな応用ができたので、本気で研究すると、現代特殊部隊にすら通用するような何かも生まれてくる気がします。
というのも、日本の特殊作戦群は元より、SASやデルタ等のティア1(ワン)と呼ばれるトップカテゴリーのオペレーターたちが、最後にたどりつくのが精神論の世界で、日本の侍の精神を彼らにレクチャーしているのが、たった3人と言われる日本人の教官であり、トップオペレーターであるのです。侍の精神が通用して、忍者のそれが通用しない道理はないと考えます。
[目次]
1、「技と戦術を磨くこと」それがサバイバルゲーム(以下サバゲー)をする主な目的でやってきました
脳みそをプライマリーウェポンとすることで、どんな相手やフィールドでも対応できるスキルを得るだけではなく、何よりの武器となる戦術眼を身につけるようになれる、ということを日本とニュージーランドで戦って学びました。
実車でのドリフトやヘイローとかのゲーム、女の子に気を取られもして、必ずしも継続的ではないですが、銀玉でっぽうからツヅミ弾を経て、1980年初頭にBB弾のサバゲーを経験し、歴だけだと30年以上になるおっさんプレイヤーです。
しかしサバゲーを辞めようと思ったことはありません。一番最初期のサバゲー経験時から、敵を自分なりの方法で倒そうとしてきました。なぜなら自分は一番若いプレイヤーの一人であり、銃も敵より劣っていたからです。
しかし、年上の敵を迂回攻撃で倒せた瞬間は今でも自分の宝であり、原点です。
2、サイレントキルが本分ですが、立ち止まらない強襲も好きです
今ではスニーキングスキルでおそれられるようになりましたが、実は流れるような立ち止まらない強襲に憧れがあり、銃次第で実行も可能です。
とはいえサイレントキルに不可欠のスニーキング能力も独りで戦っていく内に鍛えられ、敵の戦線の裏に侵入する時や、ナイフキルを実行する際にしばしば利用します。
ナイフキルした人にサインをもらう、ナイフキルチャレンジを思い付きで始めたのが2015年の正月からで、二月一日でナイフキルリストに30人分の署名が集まりました。おっさんも捨てたものではないでしょう。(執筆当時はナイフキルチャレンジ開始間もない頃であり、2015年12月27日の最終ゲームまでに、累計503人のナイフキルを達成しました。もらったサインか動画を証拠としてギネス記録に申請しましたが、どうも戦争を想起する記録認定には消極的なようで、証拠を審査する様子もなく却下されてしまいました。)
イキった感じですが、実は年内最終ゲームでナイフキル500人超を達成した日で、やれやれというか肩の荷が下りてホッとしてます。
しかしながら、スニーキングスキルだけではここまでこれなかったでしょう。主な理由として、サバゲーの限界とでも言うべきものがあるからです。サバゲーフィールドは実際の戦場より狭く、ゲーム時間も通常は10分くらいから長くて1時間といったところだからです。
つまり、そういった枠の中では敵の警戒レベルは高いままであり、どんなにスニーキングスキルを駆使しても、通常の侵入ではあっという間に見つかってしまいます。
3、この状況で何ができるでしょうか?想像してみて下さい
敵はまだあなたが近くまで来ているのに気付いていません。しかし、もしあなたが不適切な行動を一つでも取れば、複数の敵に一瞬で見つかり、葬られてしまうでしょう。
これがサバゲーやペイントボールで単独で戦ってきた自分が、よく遭遇した状況になります。
結果として、単独で状況を打開するには自分なりの戦術を編み出していかざるを得ず、実際にそれらはアップデートをくり返しながら、あらゆる状況や強敵に対応する何よりの武器になりました。
ナイフキルを重ねていけたのもそうですが、今でもハンドガンが主な武器であり、子ども用遊戯銃Nerfも使い始めて2か月強で50人近いキルを稼いでいます(3か月で70キルとなりました)。連射ができないので、ナイフキルのように裏を取って一度に大量ゲットは不可能なものの、ナイフキルで一番難しい最後の5mを近付く必要がないので、重宝しています。
まあ要するにマゾみたいに劣った武器で戦うのがデフォになっている訳なんですが、それでも時に戦況を覆す働きができるのも、サバゲーの持つ心理戦の面に注目した、自分なりの戦術によるところが大きいです。
具体的には「想像力」、つまりイマジネーションがカギになります。
4、まず「盲点」と「分岐点」が注目すべき点
では何を想像、あるいはどの点に留意するのが大事でしょう?
答えは「盲点」と「分岐点」になります。それら二つは明確に目視は不可能であり、簡単に見のがされてしまいがちですが、時に敵戦線を突破する重大なカギとなるのです。
まず「盲点」から触れていきましょう。
盲点には二つの意味合いがあり、一つ目は文字通りの目の盲点、死角になります。野戦フィールドより、特に障害物の多いCQBフィールドで良く起こり、相手プレイヤーが障害物にこもりがちだと、死角を利用して簡単に近付くことができます。味方からの制圧射撃の援護があれば、より簡単になるでしょう。
5、もう一つの「盲点」とは?
もう一つの「盲点」は心理的な死角、盲点になります。
ここは特にこの戦術論で重要な部分なので、より詳しく説明していきます。
そしてその前に、私の過去戦ってきた強敵たちのことに触れてみたいと思います。
6、自分が出会った強敵たち
長くさまざまなところでサバゲーをやっていると、色んなプレイヤーと戦うことになります。中でも印象に残っているプレイヤーやチームをピックアップしてみましょう。強いプレイヤーは沢山見てきましたが、彼らが特に印象に残っているのは、ただ強いだけではないからだと思っています。
まず思い出すのが、東京に2006年から2年住んでいた時にお世話になった群馬のチームです。自衛隊の駐屯地が近くにある関係からか、現役でベテランの伝説的な本職さんを擁し、過去に存在した関東地区のトーナメントで優勝したこともある老舗チームです。
残念ながら2000年代後半にはその手の公式なマッチ自体がなくなっていて、日本の全国大会が開かれる気配もありません。一度ニュージーランドで全国大会が盛り上がっているのを見てしまうと、発祥地である日本でこそ盛り上げなくてどうするんだと思ってしまいます。でも2010年代後半から、ペイントボールのようなサバゲーの一種、UAB(海外でいう「クイックQB」)が盛んになってきてますね。
とと、脱線してしまいましたが、その老舗チームの連係レベルはベテラン揃いのチームならではのいい意味での老練なものでした。
あるゲームで残敵を掃討する際に、味方が阿吽の呼吸で横一列に展開し、ひたひたと音もなしに侵攻する様は感動を覚えた程です。まるで自分も含めて一つの細胞か何かになった感じで、それを無線も支持も何もなく、ただ目配せだけでできたのは驚きでした。
ネットで知り合いになり、何度か一緒にプレイさせてもらった有名ブロガーロンさんのお師匠さんは、CQBだと特に鬼神のような強さの一匹狼プレイヤーでした。まるで関西で言うところの、「口から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタいわしたる」的な圧倒的な圧力で何度もボコられました。出身が広島県福山市で県をまたいで隣町というのも別の意味で驚きでした。
地元のリアルカウント、しかもガバ(!)にこだわるハンドガンナーの若手チームは、ハンドガンで戦うプライドと美学を教えてくれました。あえて劣った武器で戦うというのは、海外では理解に苦しまれますが、それなりのスキルを要求されることから日本では一種のリスペクトがありますね。当時日本有数のコスプレチームでもありました。
今でも最高のスナイパーだと思うプレイヤーが地元岡山県にいます。彼との戦いでずいぶん鍛えられたと思います。いいプレイヤーとはどういう存在かを教えられたように思います。
2017年に日本に帰ってきても、あるプレイヤーは週末は仕事でゲームできないながら、驚くほどのスキルを持っていたり、日本人のスキルは個人技では遜色ありません。
そして、現在所属させてもらっているチームには、詳しくは言えませんが、ただ元自衛官というだけでなく、ホンモノの中のホンモノのプレイヤーたちがいます。自分のスキル・戦術の何が通用して、何が通用しないのか、学ばせてもらうのにこれ以上の存在はないでしょう。実に恵まれています。
ニュージーランドでもさまざまな強敵と出会いました。元ニュージーランドSASだったあるプレイヤーは、射撃中でも驚愕の広い視野を持つベテランで、必殺の横からの奇襲を何度も撃退されました。彼をナイフキルすることが最大の目標でしたが、一度は側背あと5mまで迫ったもののこれまた気付かれ、返り討ちにされました。しかし、そこまで気づかれずに近づけたのを、彼に褒められたのはうれしかったです。
クライストチャーチのTAGというクラブチームの2マンセルは、初めて対戦した時はベテラン4~6名分はある攻撃衝力に、後ろから戦線を文字通り食い破られました。タクティカルエアソフトグループと名乗るだけあって、TAGはどこで戦っても対応が早く、また若手が中心で機動力も高い、間違いなく世界レベルといっていいチームです。
CSGは自分が初めてニュージーランドでゲーム参加できたチームで、ニュージーランド随一の老舗チーム(1984年結成)になります。2014年頃から流行っているのが2次大戦当時の実銃(モシンナガン、リーエンフィールド等)のストックにVSR10のユニットを組み込むチューンで、上級者がしていたこともあり、火力が低くともそれを補う戦術眼を持っているので侮れない存在であり、また味方だと頼もしい戦友となります。
司令官スキルを持っているプレイヤーが多いのも特徴で、それでいて女性プレイヤーも参加しやすい愉快な雰囲気もあり、色んな意味で大人のチームです。
フィールドで婚約の瞬間をみんなでお祝いできたのは、サバゲー人生でも特筆ものの出来事でした。彼らカップルとはよくお互いの家を行き来するほど仲が良かったし、理想のカップルですね。
そしてついに後発のチームACGで自分によく似たスタイルの戦いをするプレイヤーを見つけました。50歳過ぎの元軍人の、自分と同じくおっさんプレイヤーですが、防御にまわるととまあ厄介なヤらしい場所にアンブッシュされます。同じく心理の盲点を突いていくスタイルで、見ている世界が近いと感じます。陽気で人気者のキャラクターですが、なぜか写真撮影されるのは苦手な様子。
2015年にナイフキルチャレンジを始めた当初、一番のお客さん(ナイフキルリストの常連。彼は一番最初の署名者でもある)だったプレイヤーが、その年驚くべき急成長を遂げ、2015年暮れまでには最も手強い相手の一人にまでなりました。思うに彼こそが一番、自分のこの戦術論から色々吸収し(戦術眼のあるプレイヤー数人に読んでもらっていたが、彼もその一人)、またそれ以上に彼なりの努力で独自の強さを身につけたように感じます。師弟関係なんかありませんが、心技体が揃った彼の成長は見ていてとてもうれしいことでした。
そして最も若いクラブチームであり、次代を担う若手が特に多いアリーナに参加することが多いのは、当時クライストチャーチ唯一のCQBフィールドだったということもありますが、若手プレイヤーに身をもって範を垂れたいという、おっさんプレイヤーなりの思いもあります。初めての弟子もできたことだし。
誇りを胸に戦うように彼らにもなってほしいですね。敵を多く倒すより大事なことがあることを知ってもらえたらと思います。
2014年にドイツからニュージーランドに、ワーキングホリデーで来ていた若いプレイヤーとは、よくバディを組んで戦いました。ニュージーランドチャンピオンになったTAGのレギュラーメンバーの分隊相手に、初心者込みの弱小分隊で勝利したのもいい思い出です。こちらの戦術意図をよく理解してくれ、敵の注意を引きつける役を阿吽の呼吸でお互いにやっていました。
当時彼はまだ弱冠19歳だったけど、すでにベテランでしたね。同じ歳くらいに二次大戦時活躍した150輌以上撃破のスコアを持つ戦車エースである、オットー=カリウス氏をよく彼に重ねていました。宮崎駿さんの漫画「泥だらけの虎」でも有名ですが、彼もまた若いにもかかわらず、カリウスのように用心深くクレバーな兵士でした。
2014年の終わりにTAGでナイトゲームがあった時のことです。TAGといえども基本的にキウイはナイトゲームに不慣れで、一方自分は日本の夏のナイトゲームで鍛えられている上、東京マルイソーコムmk23をメインに、パッドもEVA素材で音が出ない夜戦装備で固めているので、その気になれば後ろから忍び寄っていつでもナイフキルできるというくらい優位な状況でした。
夜戦で得意の敵地深度潜入後のアンブッシュをした時のことです。不意に直近3mくらいの位置に気配を感じました。まさかそんなリスキーな戦術をとるプレイヤーは自分以外にはいないと思っていたので驚きました。http://honneamis.blog.fc2.com/blog-entry-13.html
敵か味方かも分からず、彼が射撃を始めるまで姿勢を低くして固まっていました。幸いなことに彼は味方でした。しかも納得のチャンピオンチームNACのコアメンバーでした。
NACといえば、自分がナイフキルチャレンジを始めたのもNACのあるプレイヤーに触発されてのことです。ニュージーランドのナイフキル第一人者で、ラバーナイフのエッジに5つずつ刻むスコアを入れていました。一目で数えきれない数で、「スゲーかっけぇ!」とシビれたのを思い出します。
NACにはこれまで見た中で最も洗練された戦術である、「釣り野伏せからの時間差挟撃」を複数の分隊で実行できる、国際的に見ても稀有な戦術家が、しかも驚くことに複数います。2014年に5時間掛けてネルソンまで遠征に行った時、アンブッシュしたベトコンを、サーチ&デストロイするベトコントレイル戦で、自分たち海兵隊側は人数が多いにもかかわらず、文字通り全滅させられました。
「釣り野伏せり」だけでも凶悪なのに、「時間差挟撃」も重ね掛けされると手も足も出ません。どちらか片方だけでも分隊単位で実行するのは難しいだけに、全くの驚きです。
趣味を大事にするニュージーランドでは、毎週末ゲームを開催するのが常で、単純に経験値がアップするのに加え、日本人と比べて、自らのルーツを大事にする彼らの血には、戦闘民族マオリやハイランダー、ロビンフッドみたいな先祖に対する、あるいは世界初の特殊部隊であるSASへの誇りが色濃く反映されているように感じます。
うまく言えませんが、キウイ流ジョンブルハカ魂と認識しています。
2014年に若いキウイアーティストが全世界のビルボードチャートで1位や2位になったり、オリンピックの競艇や砲丸投げでは男女ともに圧倒的な強さを誇るなど、たった400万人の人口であるにもかかわらず、次から次に世界トップレベルの才能が現れてきています。
大好きな映画「世界最速のインディアン」はキウイスピリッツを最もよく象徴しています。1920年に製造されたポンコツバイクで300km/h出そうとか、アホウとしかシロウト目には見えませんが、何と300km/h超の世界記録を達成したのが、彼が68歳の時だというのはあり得ないほどクールだと思います。またね、本物も主演のアンソニー=ホプキンスに負けずカッコいいんですよ。
あんまり感動したんで、彼の住んでいたニュージーランド南島南端のインバカーギルまで行って、マシンをテストしていたという海岸まで見てきました。もちろん彼の子孫が運営するミュージアムにも行きましたよ。
彼の言葉がまたいいんですよね。「夢を追わない人間は野菜と同じだ」。なんかね、刺さります。グサッと。
そして何が彼をそこまで駆り立てたのか?自分にはそれこそがキウイスピリッツのように感じました。ニュージーランドのマスコミの好きな言い回しの一つに「Kiwi flys(キウイは飛べる)」というのがあります。
キウイはもちろん飛べない鳥ですが、世界で活躍をするニュージーランド人は、その少ない人口にとらわれず、自分がいいと思うものをひたすら追求していくことで、世界一流のレベルに到達するんですね。田舎もんの卑屈さなんか一切持っていませんよ。
固定観念を根底から覆す。そう、キウイは飛べるんですよ。憧れます。
2017年3月にオランダ遠征した時に、イギリスに寄って家にも泊めてもらったキウイのプレイヤーも多才なアーティストで、サバゲーの腕も極めつけに高い一人です。
自分は、彼が歌うのが果たしてデスメタルなのかヘビメタなのかすら分からず、それどころか一言も聞き取れないくらいですが、何か心の底を揺さぶられるのを感じます。ウルサイ系の音楽でそんなこと感じるのは初めてです。
余談ですが、503人ナイフキル達成動画にも快く音源使用の許可をくれたのも彼になります。感謝。
さらに日本と違う印象を持ったのが、有能な指揮官スキルを持つプレイヤーの多さです。
これは人前で物怖じしないような公教育のおかげでしょうね~。例えばテレビでの小芝居やインタビューは、日本の素人は見ていられないほど不自然なのが多いですが、キウイの素人は子どもまで実に自然体で、即役者になれそうなほどです。
どういうことかというと、指揮官役は動揺を部下に悟られると士気に影響するから、自分の判断に自信を持ち、即座に判断を下せる能力も必要なんですね。それは多分に指揮官役を演じきれる役者としての資質も影響しているように感じます。自分を含めて日本人の弱い分野ですね。
またこれは共通しているなと思ったのが、日本もニュージーランドも、軍人さんは本職であるだけあって、エイミング等のスキルが半端なく高いということです。そりゃ一般人と違ってみっちり訓練してますもんね。
例えば、銃の構え方一つとっても、彼らのホンモノの構えはサバゲーでもアドバンテージがあるということです。
確かに些細な違いでしかありませんが、よく初めてのフィールドやチームに参加させてもらう時、ゲーム前の振る舞い方や立ち姿で強敵を嗅ぎ分けています。強敵にどう対処するかが自分にとっての生命線なので、我ながらそれは良く当たります。
でも、自分は最強キャラのプレイヤーではないので、そうした才能ある強プレイヤーには正面からでは太刀打ちできません。
しかし、ここで“自称”最強ではないが、ユニークなプレイヤー”である戦い方の本分が現れてきます。
それはそもそも、日本人とキウイの上級プレイヤーを比べても、心理の部分で大きな違いがないことに気付いたのが始まりになります。
さて長々と日本とニュージーランドのプレイヤーを紹介してきましたが、いよいよ次章から心理戦に注目した戦術論の核心、「心理的盲点」に触れていきますよ~。
7、強プレイヤーになるための必須スキルとは
これから戦闘時の心理について改めて説明していきますが、例えば「高い状況認識能力」は上級プレイヤーになるためには必要不可欠なスキルの一つです。
それができればビギナープレイヤーよりもはるかに戦況の把握が速くなり、何をすべきか、または何をすべきでないかも瞬時に理解できるようになります。
それは言い換えれば、「戦場を立体的に構築し、俯瞰できる能力」とでも言えるでしょう。
そうしたスキルは経験を通して培われるため、ベテランになるにつれ、多かれ少なかれ独自の認識能力を獲得していきます。
8、“戦場の霧”は、戦場での認識能力の不確かさを表した、最も有名な言葉
実際の戦場にしろ、サバゲーのフィールドにしろ、“戦場の霧”の疑心暗鬼状態には容易に囚われやすいものです。
そうなると、すべてのものが疑わしく思えてくるので、ビギナープレイヤーから中級プレイヤーは、バリケードやカバーの後ろから動けなくなってしまいがちになります。
その一方で、最も上級なプレイヤーを観察すると、戦況が手に取るように見えているだけでなく、戦場全体を彼のコントロール下に置いてしまうことも可能になるのが見て取れます。
9、米軍のOODAループはとても役立つ意思決定理論
OODA Loop(ウーダループ)のOODA(Observe観察, Orient認識, Decide決定, Act行動)は良く知られたPDCA(Plan計画, Do実行, Check評価, Act改善) に替わる意思決定プロセス、というか行動選択理論であり、米軍のパイロットトレーニングが目的で開発され、現在では戦術どころか戦略にまで適用されている有用な理論です。
元は空中戦において、迅速な状況判断と意思決定が要求されることからできた理論ですが、その有用性により、米軍全体にまで活用されるようになり、今では企業活動にも広まってきています。
映画「トップガン」の動画で、OODA(Observe観察, Orient認識, Decide決定, Act行動)を主人公視点で逐一説明しているのがあったので参考にしてみて下さい。巧みにトンネルビジョンに陥れられてるのが分かります。
このOODAループをサバゲーの視点から捉えた場合、OODAループの迅速なプレイヤーは指揮官スキルも高い傾向にあると感じます。というのも、OODAループの回転の速いプレイヤーは、たとえ一度敵にしてやられたとしても、対策を即座に用意し、立て直すのがうまいからです。
残念ながら、自分は部隊先頭のポイントマンになるだけで判断ブレブレになるので、まったく指揮官向きではないのが悔やまれます。今のところ責任を持てるのは自分だけですね。
でも一度OODAループに慣れ親しめれば、自分でも以下の映像のような戦闘ができるようになります。
いつものステルス戦闘とはまったく逆の戦い方なので、よく驚かれます。
まずこちらの映像から。
14sep2014 nelson CQB cheerio full auto charge Normal ver.
次にどのようにOODAループを回したかを逐一説明しています。一瞬でどれだけ色々考えて同時多発的に次の手を打っているかが分かると思います。
また、相手を出し抜くために、おとり攻撃をしつつ自分で背後に回り込もうとしています。じつはこれこそがOODAループの特徴でもあるのです。
14sep2014 nelson CQB cheerio full auto charge Commentary ver.
https://www.youtube.com/watch?v=nrlzizoryy4
OODAループの特徴と言いましたが、似ている例えばPDCAサイクル等の理論とOODAループが決定的に異なるのが、“戦術的優位”を追求するために生まれた、飛行隊長や中隊長レベルまでの、まさしく実戦指揮官のための行動選択理論であった点です。
特にOODAループの肝であり、最も実戦的なコンセプトが、「相手のOODAループを逆に利用して、状況のイニシアチブを取る」というもので、これは自分が2006年からサバゲーでも実行しているものに非常に近く、また一番最初に挙げた「忍者の戦術」にも相通じるものであると言えます。
実例として、2014年のNACでのインタークラブゲームの動画が残っています。1分40秒あたりから敵の裏をかいて接近しています。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gg0dAjCka4k
この動画を見て、自分がスニーキングスキルで敵に近付いたと思われるかもしれませんが、通常ルートでスニーキングしてもすぐ見つかっていたでしょう。実際にこの地点はボトルネックとなり、突破しようとした味方はことごとくヒットされてしまいました。
自分は、敵は索敵でブッシュの端しか見てないと踏み、あえてブッシュの中を通り抜けることで、敵のOODAループを欺いたことが状況突破のキッカケとなったのです。
ごく些細なことですが、時に大きな違いを結果としてもたらすことがあるので馬鹿にはできません。
10、便利な状況認識能力も、時には盲点となる
さて前章でOODAループのコンセプト、「相手のOODAループを逆に利用して、状況のイニシアチブを取る」について実例を使って説明してきましたが、それが相手に取ってどういう状況なのかを説明していきます。
これは2006年当時、東京に住んでいた頃に、後に自分が覚醒するキッカケとなった、今でも歴代トップ3に入るスキルのソロゲーマーさんと戦って得た教訓でもあります。
その日は一緒にインドアCQBフィールドに行き、敵になった時は当然コテンパンにやられてばっかりだったんですが、あるゲームであえて後半戦勝負で、前半は隠れて索敵もしなかった時のことです。
状況が固まって、自軍フラッグがあやしくなってきたところで迂回を掛けると、それまで近づけもしなかった彼に肉薄できたどころか、ゼロ距離からの奇襲で倒せてしまったのです。
ゲーム後に、その勝因をいろいろと自分なりに分析してみて得た結論は、「彼ほどの優れた状況認識能力でも、いやむしろ高い状況認識能力を持っているからこそ、一度状況を認識してしまうとそれ自体が盲点となる」ということです。
つまり、上級者ならではの素早い状況認識能力に基づく迅速な行動は、孫子の「兵は拙速を尊ぶ」という至言と重なるものの、言い換えれば、予想外のことに対しては脆い場合があることに気付いたのです。
さあ「心理的盲点」が分かってきたでしょうか?
ここで敵にとっての計算外の要素というか、自分が“予想だにしなかった虫”となり、状況認識能力の便利さの、心理的盲点につけいる隙ができてくるのです。
それは実際にはごく小さなものですが、その「落とし穴」、つまり思い込みを最大限利用することで、「相手のOODAループを逆に利用し、状況のイニシアチブを取る」ことが実際に可能になります。
要するに、高い状況認識能力は便利であるがゆえに、一度頭の中で状況を構築してしまうと、こちらの罠に捕らえられたことを知らずに、それに固執してしまう傾向があるのです。
これは人間である限り、どの国の上級プレイヤーであっても一様に同じ徹を踏みがちですが、それは同時に、いかに上級プレイヤーになるのに素早い状況認識能力がベースになっているかの証明であるとも思います。
それをダシに、さらに利用するのがOODAループであり、忍者の戦術論であるんだから面白いですね~。
さてそれでは例によって動画の実例集です。
2017 winter Airsoft highlights in Japan n Netherlands 2017
冬の日本とオランダでのサバゲハイライト。ピコハンキルもあるよ。
Tokyo expeditionCQB field SISTER東京遠征埼玉SISTER
残り3分で後半戦を掛ける効果についてのの実例です。
11、キルレシオは気にしません。気にするなら電動ガンを使ってるでしょう
キルレシオもカウントしていた時期がありますが、それがプレッシャーになるのも嫌なので、今はほとんど気にしなくなりました。どう面白く倒せたか、もしくは倒されたかとか、戦局にどう貢献できたかの方がよほど大事です。「記録よりも記憶に残る」プレーの方が、たとえそれがグレネード自爆で周囲大爆笑wとかでもカッコいいじゃないですか(笑)
事実、仮に同じ相手に9回連続で倒されてもオイシイ状況であるとも言えます。
なぜなら、その相手にとって自分は脅威ではないと認識され、無視されるかいずれにしろマークは外れるので、前章で触れた「心理的盲点」が生む落とし穴にハメやすくなるのです。
そして自分なりの戦術を駆使した1勝は、すべての負けをチャラにしてくれるものです。
今までの経験から言えば、相手が手強ければ手強いほど、自分が仕掛けたことの意味を理解してくれる感じです。
自分がどういう読みで罠を張り、一瞬の隙を突いてアンブッシュやナイフキルを成功させたかを、上級プレイヤーほど驚きと共に認めてくれるのです。汚いとか、単なるマグレだとか思う上級プレイヤーには会ったことがないですね。まあ騙されたとか思われてても否定はしないですが。。
でもこれだけは確かですけど、自分にとって価値あるターゲットだから罠に掛けるのです。ナイフキルは最大限のリスペクトでもあるのですよ。
それに自分は、芋スナとか臆病者とかゾンビとか思われるより、派手に戦って死ぬ方が本望です。
なぜなら、自分が心掛けているのが審判員や敵も楽しませることであり、相手にとっても価値あるターゲットでいようと思うからです。
21Dec2014 ACG flank attack after ambush 敵をパスさせてからの奇襲
隠れてパスさせてからの撃ち放題。
From April 2017 ①~60 Nerfキル+fail+good kills compilation Nerfキル、ピコハンキル他ハイライト
海外で人気の子ども用遊戯銃ナーフをサバゲーで使ってみました。
12、戦いの本質は「敵の嫌がることを実行することで、最小のリスクで最大のリターンを得ること」
たとえば、「撃たないことで広がる可能性」というものがあります。あえて撃たないことで、敵をミスリードし、罠の奥深くまで誘い込むという、よく自分が使う戦術です。
これを複数の敵に使うと、一人で敵分隊を一網打尽にできたりと、たとえ自分がヒットしても、味方に大きく貢献ができます。上記の「最小のリスクで最大のリターン」が可能になるのです。
また、低脅威度の敵を撃たないことや、後回しにすることもよくあります。
そうすることで自分の仕事が楽になるからですが、どういうことかというと、敵の警戒レベルを無闇に上げないことで、敵のベテランでさえ状況認識を誤りやすくなるのです。
171001ガナー定例戦 敵殲滅Annihilate all - YouTube
一度も発見されないことで敵のOODAループを終始混乱させ、敵全滅に成功しています。
そして自分がアンブッシュからの奇襲で、できるだけ心掛けているのが、「敵の頭から倒す」や「後ろから順に」ということで、それこそが「敵の嫌がること」になります。
敵分隊リーダーや、ベテラン兵を初撃で倒してしまえば、混乱は一瞬にしろ、より長引くことにもなり、また分隊の後ろから倒していけば、攻撃自体に気付かれることを遅らせ、時に敵を殲滅する貴重な時間を与えてくれるのです。
あるいは、何も正面切って戦うことにこだわらず、自分一人で敵分隊を長い時間釘づけにすることができれば、生きて嫌がらせをしているだけで、「最小のリスクで最大のリターン」を得ることも可能なのです。
サバゲーは基本同数で戦うので、将棋のような「戦術レベル」の戦いが基本ですが、サブタイトルのような戦いの本質に立ち返ることで、囲碁の「戦略レベル」のような戦い方もできるということです。もっとも、ちょっとは気が利いたリーダーがいれば、無意識にしろやってることだとは思いますが。
それでは動画の実例集です。ミスリードがスニーキングよりも重要なことが分かって頂けるでしょうか?
これは自分が敵戦線背後に潜り込むところを映した、一番古い映像だと思います。たまたま撮ってくれたマルコムが「ムーブオブザデイ」なんてタイトルをつけてくれた、思い出深い映像ですね。
ACG 2nd March 2014 “Move of the day”
http://www.youtube.com/watch?v=QuIUgupBV5Q
上記の映像のような試みが、自分が罠を張るのに利用する“心理的盲点”ということになります。条件さえ整えば、「視界に入っていても見えない」、あるいは「見えていても見えない」という不思議なことが起こるのです。
たとえば下の例では、敵がある地点を索敵して、一度そこが安全エリアだと判断すると、目の前に自分がアンブッシュしていても、まったく認識できなくなるのです。
2mまで近寄られても気づかれないギリ―アンブッシュ。
10June2017 CSG Alex's new ghillie made me invisible
元本職さんの作ってくれたギリ―スーツが役に立ったということもありますが、相手の心理的盲点に完全に入り込むことさえできれば、以下のようにギリ―すら不要になります。
↑あえて左のフィールドに対して、反対側のフィールド端の道にアンブッシュ。
丸見えの道側にはいないだろうという、思い込みを利用しています。
実際の動画。
13、「相手のOODAループを逆に利用し、状況のイニシアチブを取る」とどうなるか?
これまでの解説でOODAループの有用性を何となくは分かって頂けたことと思います。うまく使えば、戦術的にとれる手数が飛躍的に増えるのです。背後を取ることも比較的容易になるので、それを利用してナイフキルを積み上げていきました。
完全に背後を取ってしまえば、実は10mまで近づくことは簡単です。最後の5mは格段に難しいですが。
170428 28Apr 2017 CSG Knifekill enemy by enemy's sword
敵の刀を奪ってナイフキル
14、自分の攻撃力を最大化するには?
攻撃力といっても色々ありますが、ここでは攻撃衝力(こうげきしょうりょく)、例えるなら台風で言うところの「瞬間最大風力」について触れていきます。
いやすいません、ちょっとニュアンスが違いますね。攻撃衝力は瞬間最大風力をぶつけた時の圧力といった感じです。奇襲時にその大きさと的確さはとても大切です。
というのも、これまでの経験から、単独戦闘でも複数の敵を制圧するのには、奇襲時のインパクト、つまり攻撃衝力をできるだけ最大限化する必要を感じるからです。
ただし、自分のプライドとしてフルオートはできるだけ使いたくありません。目標選定の的確さと効率化、そして東京マルイソーコムmk23の静かさが自分の武器でもあるからです。
なので攻撃衝力という点では、自分の場合それほどの火力はありません。むしろ低い方です。
しかし、完全に背後を取る等の、一方的に攻撃できる瞬間をつくることができれば、劣った火力でもそれを最大化できます。
そして、静かな発射音のソーコムmk23ならではの利点、気付かれるまで、あるいは居場所を特定されるまでの時間が一瞬でも遅くなれば、それだけ多くの敵を倒せるのです。
次の動画は、自分のよくするアンブッシュで、敵の分隊を一度通過させた後、奇襲で全滅にさせているものです。
170604-5 NAC, interclub game, Day 1 CQB at Armageddon VCトレイルで分隊撃破1
https://youtu.be/M8MSQsIuNCA?t=6m5s
分隊撃破2
https://youtu.be/M8MSQsIuNCA?t=8m55s
続いてのも、攻撃力を最大化する方法の一つです。
味方を軸として活用することで、恒星つまり「軸」の味方に敵の注意を引きつけてもらい、惑星となった自分は自由に奇襲を掛けるというものです。
動画はちょっと分かりにくいかもしれませんが、同じ部屋に別の入り口から突入するタイミングを、味方とほんの少し遅らせることで、敵の虚を突くというものです。
170715 the Arena same time entry from another entrance with Mark
15、戦況を大きく左右するターニングポイントを自分でつくるには
独りでできることはタカが知れています。しかしやりようによっては、前章で示したように単独で戦局をひっくり返すことも可能です。
それは一にも二にもターニングポイント、つまり戦局の分岐点を知ることが大事です。
その戦局の分岐点の特定のタイミングに起こす行動次第で、一人でも戦況を大きく左右する戦果を挙げ、自分自身でターニングポイントをつくることも可能になります。
特に、奇襲が敵にとって思いも掛けない方向からのものになれば、単独であっても凶悪な攻撃衝力を発揮することになるのです。
その「ターニングポイント、特定のタイミング」を知るには、「ゲームの流れ」を感じ取り、現在の状況、もっと言えば、今何が起こったか、または起ころうかとしているかを正確に知るセンスを磨く必要があります。そのセンスがあれば、「今だ!」という特定のタイミングを本能的に察知できるようになるのです。
「ゲームの流れ」の中で留意するものは沢山あります。特殊な地形が与える影響だったり、敵味方のキープレイヤーのヒットも、戦況に大きく響くことがあります。
また、ゲーム終盤には敵味方の緊張感が弛緩しがちになることや、逆に勢いがつきチーム全体がイケイケ状態になり過ぎて、ガードが下がってしまったりだとかの、単にその時の空気感といったものまで、勝敗を左右するキッカケになり得るのです。
初心者の内は、なかなかゲームの流れの中で、何が起こっているか察知するのは難しいと思いますが、ゲームが終わってからもそれを検証してみることで、次第に戦術眼というものが磨かれていくはずです。
検証で大事になるのが、「だからダメだったんだ」と結論付けるのではなく、「次回はこうしよう」という明確なイメージを持つということです。
その学びがなければ向上もなく、ターニングポイントをつかむセンスを身につけるのに恐ろしく時間が掛かってしまうことにもなりかねません。
それでは最後に、名将であり智将である野村監督の名言で〆たいと思います。
曰く、「勝ちに不思議な勝ちあり。負けに不思議な負けなし」
深い、深過ぎます。負けの理由を知り、その対処法を積み重ねていくことが、いずれ強さにつながっていくことを言っているんだと思います。
○ターニングポイントの例と、それによってできる選択肢。
・フィールドの要衝→味方が獲れば攻勢の好機。敵が獲れば即座に奪回を考える
・敵味方のキープレイヤーの動向やヒット→ヒットしたのが敵であれば瞬間的な攻勢のチャンスが生まれることが多い。味方の場合、増援を考える
・敵味方の意識の向きや状態→攻めか守りか。士気の変化。最終攻勢に入った敵は後ろへの警戒が鈍りがち
・敵味方の分布図と隔たり→どこが危ないか、あるいは突破して裏取りできるか。フィールドの空白部分を探る
・注意を引きつける音が起こった→激しい戦闘や電車通過音等で、自分の動きが敵に知られなくなる
・敵が強固なバリケードに籠った→死角ができるので接近しやすい
16、“ターニングポイント(戦局の分岐点)”を判断するのは情報ではなく、本能的な直感が大事
情報には「インフォメーション」と「インテリジェンス」の二つがあります。表面的な意味の「インフォメーション」に対し、CIAのIの意味でもある「インテリジェンス」は、核心的な情報そのものを意味しています。
ターニングポイントは、表面的なインフォメーションの中から、いかに素早くインテリジェンスとなる、重要な情報を読み解くかがカギとなります。
何でもターニングポイントになり得るし、「盲点」を知ることと同じく、自分の理想と思う戦術眼では、基本中の基本の思考法ともなっています。
さいたま市のCQBフィールド「SISTER」で、ある常連さんの反応に驚かされたんですが、戦闘中にフィールドのほぼ反対側が敵に突破されたのを、銃声だけで即座に判断して火消しに行っていました。
銃声という単なるインフォメーションから、より重要な敵の動きという、ターニングポイントとなるインテリジェンスを導き出した上、その情報が新鮮な内に対処できた、お手本のような例ですね。
「幸運の女神に後ろ髪はない」とよく言われますが、それをつかまえるには、本能的な直感を自分自身で手に入れる必要があります。それはまた、誰かに教えてもらってでは決して得られないものとも言えます。
17、「盲点」と「ターニングポイント」を自分自身で感じ取る本能を磨く
本能は教えてもらって身につくものではありません。自分で何度も悔しい思いをしながら、自身の血肉としていくものです。悔しさをバネにしてしか、そして自分を変えようとしなければ、本当に身につくものではありません。負けた理由を自分以外に求めていては、本当の成長がないのと一緒です。
しかし、「盲点」と「ターニングポイント」をゲームの中でクリアに感じ取ることができれば、時に敵分隊丸ごとをゲットしたりすることも可能になってきます。
自分の経験では、ペイントボールでもそれらに注目した戦術は通用する実感を得ました。サバゲーもペイントボールも本質的な部分は変わらないということですね。他の競技やスポーツが、“戦争”の代替行為であるのと一緒だと思います。
18、この道をゆけばわかるさ そうすれば 己のみの景色広がる
「石の上にも三年」ということわざの意味は、主に忍耐は美徳であると捉えられていますが、「忍耐が開く新しいステージ」と解釈することもできます。
ちょっと話は外れますが、自分の経験上、2年同じことを仕事にしろ何にしろ続けることで、特殊なセンスというか能力を身につけるようになる感じがします。
それはステーキ肉が焼けるベストの瞬間だったり、余熱も考えて天ぷらを油から揚げるタイミングだったり、大したものではないですが、介護の仕事をやっていた時は、目の前の人が独りで死ぬ人かどうかが分かるようになって(まあ厳密にはどんなタイプか直感できる程度ですが)怖くなったこともあります。
要するに、3年も同じことを続ければ、自ずと違う景色が見えてくるものです。
自分の場合、80年代中頃に初のBB弾を使ったサバゲーを経験してから、かれこれ30年以上もサバゲーをしていることになるんで、そりゃ他人と違った景色が見えているとしても不思議じゃない気がします。
残念なことに。仕事としてのキャリアは、一貫性を持って積み上げれなかったんですけどね。。
19、自分はさほどミリタリー装備のファンではないですが、装備品にこだわるのもサバゲーの楽しさの一つですね
2014年当時の装備と、2017年にニュージーランドを引き払う時の、自分の装備と銃について触れてみたいと思います。
特に好きなミリタリー属性はないものの、東京に住んでいた2006年くらいに固まった自分のプレースタイルは、ハンドガンをメインウェポンに、言わば零戦のように、軽さと敏捷性に活路を見出すスタイルになります。もしくはクルマでいうところの、「軽量化に勝るチューンなし」といったところでしょうか。
また、静粛性も大きなポイントであり、そもそも自分の装備が夜戦に焦点を合わせてセットアップしているのもその理由です。ジャラジャラと音のするBBローダーは持ち歩きませんし、やわらかいエヴァ素材の二―パッドやエルボーパッドは匍匐前進する時も音を出しません。
東京マルイのソーコムmk23ハンドガンは、固定スライドによる静粛性で、2018年現在でも自分のメインウェポンとなっています。
内部はいじっていないストックモデルでも圧倒的な静音性と、特にアンブッシュ時に取れるハンドガンならではの射角の広さと隠ぺい性で、インドアも野戦フィールドもこなせる、一番信頼できる相棒です。敵の射撃音に紛らわせれば、ほとんど無音で、他の敵に気づかれずに倒していくということもできます。
自分が唯一持っている電動ガン長モノが東京マルイのステアーAUGになります。歯科技工士で腕のいいガンスミスでもある古くからの友人の手で、徹底的な静音化を施されたおかげで、有名ショップカスタムのサイレントAUGよりも静かになっていて驚きました。
しかし、残念ながらそのAUGは日本に持って帰るのを断念せざるを得ず、ニュージーランドの友人に預かってもらっています。でも、最高の電動AUGの一つであるのは間違いないので、売ったりはしないでしょう。
また、年を取ったのもあり、重い長モノを装備するのがおっくうになってきたのもあります。加えて、ハンドガンのみの方が楽しい上に、性能で劣っている分、スキルを常に磨き続ける必要があるので、ちょうどいいトレーニングにもなっていると思います。
2014年当時、ソーコムmk23のセカンダリウェポンとして装備していたのが、同じく東京マルイのシグP226になります。かなり中華ガンがシェアを伸ばしてきた2017年の今でも、東京マルイは、ことハンドガンでは最も信頼のおけるメーカーです。
E2になって改良されたものの、自分の持っていたのは旧型の分割マガジンだったのでガスの持ちが悪く、リアルカウント分しか確実には撃てなくなっていました。
しかし、ソーコムmk23もP226も、ニュージーランドで一般的なプロパンガス運用が良くなかったのか(シリコンオイルは別に注入します)、最終的にはそれぞれ1マガジンしか生き残っていませんでしたが、一日通しての平均射撃回数が50発程度だったので、特に不満に感じることもなかったです。
銃撃戦になるとハンドガンではほぼ撃ち負けるので、一方的に攻撃でき、しかも確実にゲットできる際にしか射撃しないように気をつければ、自ずと射撃回数は減っていきます。2014年ごろからナイフキル数が増えていたことも要素としてはありますが。
フィールドに持って入るBB弾も、ジップロックの袋に一握り100発程度で、それはBBローダーなんかが動くとジャラジャラ音がするのを嫌ったからでもあります。意外に遠くまで聞こえるし、夜戦では漏れ出る音が致命的になることも多いからです。再装填は一発一発なので時間が掛かりますが、2マグ撃ちきること自体がほとんどないので、不便さも許容しています。
長いことアサシン的なサイレントキルスタイルで戦ってきましたが、2016年にHPA(高圧縮エアー)とカスタム多弾数マグとの組み合わせにニュージーランドで出会い、作成を依頼してさっそく自分のP226に導入しようとします。
しかし、長いこと酷使してきた226は、原因不明の不調にも見まわれるようにもなっていて、安い中古のマルイハイキャパ4.3をベースにすることになりました。ガバメント系を手にするのは、中学時代にコクサイのコッキング1911を買ってから実に20年ぶりということになります。
ワンオフででき上ったUMPのマガジンを装備したハイキャパ4.3は、全長よりも長い異様なマガジンも目を引きましたが、CQBでの圧倒的な火力でも注目を集めました。なにしろ、近距離遭遇戦においては、一瞬でも素速く銃を敵に向けるのに、ハンドガンは侮れないアドバンテージがあるのです。
間もなく、上級者プレイヤーを中心にHPAカスタムがCQBフィールドで流行するようになります。冬場のガスガンの性能低下対策が主な理由で導入したHPAでしたが、自分がハンドガン一丁で大暴れするのを見て、キウイたちがロングマガジン化で300発は連続射撃できるようになった、ハイキャパHPAにその秘密があると思ったからでもあります。
半分は当たっていますが、ハンドガンのマガジン容量が増えたところで、フルオートでもないし、さしてアドバンテージにはならないのは、冷静に考えれば理解してもらえることと思います。
ですが、それまで一日に消費するBB弾が50発程度だった自分には(2015年は木刀一本で戦うことも多かったので一発も撃たない日も結構ありました)、300発でも未曽有の大火力になりました。理想とする、“立ち止まらない戦闘”が可能になったからです。
特にCQBについて言えることですが、“待ち”に入ると必ず心理的に負けることになります。芋って勝っても(英語圏ではキャンパーと呼ばれます)、ちっとも尊敬されないし、予想もできないアンブッシュとかの、よほどのことでないと称賛されることもありません。
「動いて勝つ」。これがCQBで上達する、鉄則とも言える考え方になります。中でも裏取りした後、“立ち止まらない戦闘”を展開すると、敵戦線を思うがままに食い破る、この上ない醍醐味も味わえます。
最終的にはソーコムmk23もHPAカスタムロングマグ仕様にして、カスタムハイキャパ4.3とで、サイレントキルと火力戦闘のどちらにも対応できるように二丁装備していました。ニュージーランドエアソフト全国大会で、唯一の複数回マークスマンチャンピオンから、手作りのソーコム用ホルスターをもらったのが自慢でした。彼は左利きだったから、装備するのに試行錯誤しましたが(笑)
残念ながら、日本に帰国する際に、事前に空港まで行って問い合わせをし(部品ということならOKということで、スライドだけ先に日本に送った)、当日もちゃんと箱を開いてチェックを受けたにもかかわらず、乗り継ぎのオークランドの空港でカスタムマガジンとロワレシーバーすべてが空港セキュリティーに確保されてしまいました。
あとはニュージーランドのお役所仕事の典型で、空港セキュリティーと航空会社の責任のなすりつけ合いと、確保した現物が次の日でも、もうどこにあるか分からないというか探そうともしない有り様で、お金を掛けてワンオフで何度も作りなおしたカスタムマガジンは、闇へと消えていきました。
詰めが甘かった自分も悪いですが、旧社会主義国かとも思うニュージーランドの公共サービスのいい加減さを、最後の最後で再び味わうこととなってしまいました。
まあしかし、HPA一式を日本に持って帰っても、使えるフィールドが限られることと、圧縮空気をペイントボール用のボトルに直接補充できる可能性の低さから、結局お蔵入りした可能性が高いのですが、せっかく見つけた理想の装備のセットアップを、理不尽な理由で奪われるのは納得いかないもんですね。
そういう事情で、2018年現在の日本での銃装備は、日本に残していた3丁めのソーコムmk23と、中古で売ってもらった同じくマルイのUSP電動ハンドガンということになります。出たばかりのマルイUSPのガスブロも手に入れ、同じくマルイのマイクロドットサイトを載せています。KSCのUSPの方がはるかにリアルですが、実射性能と信頼性はやはりマルイだな~と感じます。
電動ハンドガンは初めて所有しますが、発射音の情けなさと、セミの切れの悪さを除けば、十分とも言える精度と飛距離を有していて、メインとしても使えそうです。
昔、東京時代にお世話になった群馬のチームの縁もあり、新たな小型FETを手に入れたので、トリガーレスポンスをアップさせるSBDと一緒に組んで、電動ハンドガンをキレッキレにしていきたいと思っています。
そんなに数も持っていないのに、銃の説明が長くなりましたが、装備品及び服飾品については本当にシンプルです。2006年ごろに東京のアメ横の中田商店かどっかの軍放出品ショップで買った、イタリア軍の柿色(濃い茶色)のジャージをずっと着ています。夜戦での被視認性を考えて選びましたが(黒は夜戦でもむしろ目立つ)、ジャージ素材の丈夫さといい、しょっちゅう洗っても今でも現役バリバリです。
ズボンはスリムな方が邪魔じゃなく好みなので、ニュージーランドの古着屋で女物のカモフラージュパンツを破れては買い替えしていました。ちょうど裾上げもせずにイイ感じで履けるものがよく見つかりました。
白い迷彩柄のズボンだったこともありますが、PUMAの白いゴルフシューズ同様、気にせず愛用していました。
そりゃ野戦フィールドでは白は目立ちますよ。でも相手の心理の隙に入り込んでしまえば、見えていても見えなくなるのは知っていたし、意外なアドバンテージもありました。
それは、素人感丸出しの自分の装備では、初見で30年来のベテランプレイヤーとは見抜かれないので、全然警戒されないということです。言わば、潜在的敵のOODAループを、ゲーム開始前から欺瞞できるということです。
白いゴルフシューズはおまけで敵へのハンディキャップみたいなもんですな、ハイ。
2016年についに長らく使用した白のゴルフシューズを履きつぶし、メレルのトレッキングシューズを購入。PUMAも自分の足に合ってたから長く履いていたんですが、いや~MERRELLも最高です。雨が降っても濡れないゴアテックスはほんと快適です。
そして2014年暮れに、ついに最終兵器を手に入れました。そうです、ギリ―スーツです!長いこと探していた、頭と肩のシルエットを欺瞞する上半身だけのハーフギリ―がやっと見つかったのです。
ニュージーランド陸軍に12年勤めて、優秀なハンターでもあるギリ―職人アレックスの作るギリ―は、ハマると全然見えなくなります。
バーラップを一本一本ほぐしてギリ―ベースに結んでいく作業は、とんでもなく根気のいる仕事です。しかし、ギリ―作りが趣味だというアレックスは、地道な作業を何時間も、いや何十時間も掛けてギリ―を作り上げていきます。
彼の丁寧な仕事は、本物の職人はモノに魂を宿らせると感じる日本人の目にかなうもので、自分の戦術の幅を圧倒的にひろげてくれました。
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しかし、自分のプライドとして、ギリ―に頼った戦い方はしたくはありません。セミオートのハンドガンにこだわるのと同様、自分なりの戦術とスキルで勝つことが楽しいからです。
ギリ―スーツは、それをベースにしてこそ、その力を発揮してくれるものと考えています。
20、最後に自分の夢について
ご存じのように、エアソフト(サバイバルゲーム、以下サバゲー)は1970年代に日本で生まれました。銀玉鉄砲の銃撃戦は幼稚園児からよくしていたものの、自分が初めて1980年代中頃の小学生時にBB弾を使ったサバゲーを初体験しました。
といっても小学3~4年生時、手に入った銃はテルテル坊主型のツヅミ弾をストライカー式で撃ち出すものばかりで、命中が期待できる有効射程距離が5m以下といっても大げさではないショボイものでした。自分が持っていたコルトウッズマンやマスダヤデタッチャブルも、今考えるとおそろしく性能の低いものでした。ナーフの方が断然マシなくらいです。
その後手に入れたM1カービンも、足でコッキングしなければならないほどコッキングレバーが硬かった割りに、実射性能はショボイの一言でした。
当時は田舎のガキの特権で、そこら中がフィールドだったんですが、中学生プレイヤーの持ち込んだBB弾を多弾仕様にバージョンアップしたミニットマンの猛威に、小学生軍団こぞって半泣きで田んぼのあぜ道を逃げ惑った、他愛のない記憶があります。
マルイの通称、1900円シリーズを手に入れるまでは、本当にワンサイドゲームでしたが、最初に手に入れたワルサ―P38でようやく側面からのゲットに成功します。
マルイの通称1900円シリーズは本当によくできたハンドガンシリーズで、リリースされてからは、安くてよく当たる画期的な性能から、日本全国の小中学生ガン好き男子必須のアイテムとなりました。自分もワルサ―P38、ルガ―P08、南部14年式、オートマグ、オートマグⅢと揃えていき、中学になってからもMP5、MPL、M16A1、G3を弟と共有して、並べては悦に入ってました。
高校の時はコクサイのコッキングガバメントを小遣いを貯めて買ったら、マルイ1900円シリーズの3倍近い値段なのに、実射性能は遠く及ばず落胆した覚えがあります。
とはいえ、実感としてマルイ1900円シリーズが普及すると同じくしてBB弾も市民権を得、同時に「サバイバルゲーム」という名称も定着していったように思います。自分も中学や高校でも、仲間とサバゲーを楽しんでいました。
こうして、高価だったツヅミ弾に比べて安価だった6mmBB弾の発明と普及で、エアソフトガンがより身近なものになり、第一次サバゲーブームが起こります。
当時は大きなエアタンクを背負ってBV式ガスガンを運用するのが最強の火力を発揮し、フィールドでも実際多かったです。
外部ソースのエアタンクは、銃好きの誰もが一度は夢見るフルオート射撃を可能にしましたが、残念なことに同時に悪い心理要素を刺激もしました。
それは一言でいえばパワー戦争です。出力規制もなく、ホップアップも発明されていなかった当時は、敵をアウトレンジするためにはとにかくパワーが必要で、エアタンクがそれに適していたために際限のないパワー競争が起こったのです。
同じことはSS9のスナイパーライフルでも起こりましたが、人がコッキングする必要のあるスナイパーライフルは自ずと限界があり、エアタンクまでのエゲツないパワーウォーズは起きなかったように思います(実際は同様なエゲツないパワーウォーズがあったみたいです。。)
当時、パワーを上げるだけでは飽き足らず、通常の倍以上のヘビーBB弾を使用したり、6mmのボールベアリングを使用した射撃では、軽トラックの鉄板を撃ち抜いたという話も伝わっています。
それは一つの極端な例ですが、極悪パワーによる流血沙汰と、それに続くもめ事はしょっちゅう起こっていました。
実際にゲームによる出血は当たり前のことで、頬に被弾して、口の中からBB弾が出てきたということもあると聞いたことがあります。威力的には十二分に可能であり、それが最悪の部類に入らない事故であることからも、当時の狂気ともいえるパワー戦争の恐ろしさが窺えるでしょう。
なので、古くからのプレイヤー間では、パワー戦争まっ盛りだった1980年代後期は、サバゲーをメジャーな趣味にするのに大きく足を引っ張った意味でも、「暗黒時代」として認識されています。
1991年、東京マルイが初めて電気だけで作動する電動ガン、FA-MAS(ファマス)を新発売した時、東京マルイはまだマイナーなエアソフト銃メーカーか、あるいは「ガンガル」を生み出した、ちょっとアレなオモチャメーカーとしか知られていませんでした。
当時高校生だった自分は、それでも電気だけで動くエアガンの発売に興奮し(電気とガスのハイブリッド駆動のヤティマチックも持っていた)、倉敷のエアガンショップ、ノーズアートまで最初期ロットを買いに行ったものです。余談ですが、まさにそこでザクバズーカ氏と知り合って、かれこれ30年近い付き合いとなるんだから(腐れ縁ともいいますがww)、出会いって面白いものです。
話がそれましたが、とにかく初完全電動ガンであるファマスは、エポックメイキングな性能で時代を作ることになるのです。
自分も発売直後に購入したファマスを初めて撃ってすぐ、画期的なアドバンテージに驚かされることになりました。
まず何といっても、重いエアタンクを運ばなくていいのは、それだけで大きな利点でした。そして驚くことに、東京マルイの製品の命中精度は、まだホップアップ効果も知られてなく、当然実装もしていなかったものの、現在も続くような期待通りの高水準であったのです。
初期ロットから文句なしの高性能。これは工業製品としては、地味ながらあらゆる過程のレベルの高さを要求されることであり、他に時代を変えるほどのポテンシャルを持ちながら、スタートダッシュをつまづいたばかりに消えていった商品が、いかに多いかでも知れるというものです。
こうして電動ガンはあっという間にサバゲー界を席巻し、その有用性でエアタンクを事実上駆逐することとなったのです。
電動ガンはサバゲーに大変革をもたらしただけではなく、新しい世代のプレイヤーをサバゲーへといざなうことにもなりました。サバゲーがかつてないほど手軽な趣味となったのです。
特に、ランニングコストが劇的に抑えられることとなったのは大きかったです。充電代は数十円といったレベルで、あとはBB弾を買うだけが必要最低限のランニングコストとなったからです。これは今でも他の趣味に比べて圧倒的に安いと言えるでしょう。
例えばドリフトにしろ、一度サーキットに走りに行くだけで、コース料・タイヤ代・メンテナンス費用だけで数万円掛かります。その金額だと、下手すると新品のエアガンが買えてしまう額になります。
こうして、電動ガンは第二のサバゲーブームとも言うべき現象を巻き起こすこととなりました。
しかし、またというべきか、サバゲーの評判はクレイジーなパワー信者によって地に落ちることとなったのです。パワーを上げたエアガンによる、電車への発砲事件は、強化ガラスにひびを入れる威力もあり、社会を震撼させました。
「悪貨は良貨を駆逐する」とはよく言ったもので、一部の心ないプレイヤーが幅を利かせたことで、日本では一度ならず二度までも、サバゲーをメジャーにするチャンスを逃してしまうこととなったのでした。
そうした日本での経験を通して、「プレイヤーは当然オトナであるべきで、サバゲー自体も“文化”として成熟し、洗練されなければならない」と学びました。オトナというのは精神的に成熟している、という意味になります。
現在は警察が1ジュールという程よい規制を設けてくれたおかげで、ようやく平和が訪れた感がありますね。
安全なスポーツになったことで、第3次サバゲーが起きますが、日本では2017年で峠を越してしまった感もあります。
今後は有料フィールドの淘汰も起こるでしょうが、実は世界では日本発祥のサバゲーは、エアソフトとして今一番競技人口が増えているスポーツであり、今後もさらなる成長が予測されています。
これは多分に、日本でFPS(ファーストパーソンシューティング)ゲームがあまり流行らなかったのと違い、海外ではそれが主流ともなっている国民性の違いもありますが、実銃メーカーやアクセサリーメーカーが、サバゲー用のエアソフトガンや装備をリリースするようになっていることからも、世界はむしろこれから盛り上がるところと言えます。
日本はケータイの時と同じく、またガラパゴス化して世界に置いていかれてしまうのでしょうか?
自分は日本発祥のスポーツであるサバゲーが、この流れのまま下火になっていくのが我慢なりません。日本のプレイヤーも、世界に目を向ければ、もっと誇りを持ってサバゲーに向き合えるはずと思います。なぜなら海外では、アングラな趣味ではなく、れっきとしたスポーツとして認知されているからです。
自分の最終的な目標は、サバゲーをさらにメジャーな趣味として認知、格上げしていくことです。そのために自分自身で世界で戦い、またハリウッドコメディ映画化も訴えていきます。それがサバゲーを一般化する、一番有効な手段であると考えるからです。
また、日本も輪に加わった世界マッチの実現も必須であるはずです。日本国内で足の引っ張り合いをしている場合ではないのです。
そして世界トーナメント戦で勝ち進んでいくには、非常に高度な連携レベルが必要になるのは間違いありません。残念ながら、日本はまだそのレベルには達していないと感じます。海外で感じる“数の暴力”といった、ユニットならではの圧力が、日本はまだ足りていません。指揮官タイプのプレイヤーの数も少ないです。
しかし、戦国時代には世界有数の戦闘民族だったのも日本人なのだから、必ず世界と互角以上に戦えるポテンシャルはあるはずです。実際、本職の特殊部隊の世界では、今では日本人が逆に教える立場になっているし、モディファイドプローンを開発したのが、実は日本人ということはあまり知られていません。
さらに戦国時代に、死を許容することで異常発達した日本の兵法、つまり戦術を自在にあやつれる分隊ができたなら・・・。きっとアメリカの戦闘ドクトリンすら凌駕し得る最強のユニットが誕生するはずです。
日本発祥のスポーツで日本が存在感を示すだけでなく、世界一になる。なかなか愉快な夢だと思いませんか?自分は可能と思うから、それを実現できる、世界レベルで戦えるユニットを形にしたいと思います。
そして、新しいクールジャパンの一つとして認知されれば、現状すでに海外にエアソフトのイニシアチブを持って行かれつつある流れを変えられるかもしれません。
以上です。最後に自分はそれら全てを見届けた上で本にできたら、もう最高ですね!
「面白き こともなき世を 面白く」
短くも見事に生き切った、稀代の戦術家でもある、高杉晋作の有名な辞世の句ですね。しびれるほどカッコイイじゃないですか。せめて死ぬ時に、やれなかった後悔はしたくないものです。
ー 第一章 完 -
もともと、このトレーニング方法はニュージーランドの若いけれど、連係の取れたチームのために作ったもので、前置きがかなり長いです。トレーニング法は赤い太字のところからなので、飛ばして読んで貰って構いません。
NZの全国大会に参加して、個人的なスキルには日本もNZも大差ないと感じました。「競技に勝つキーポイント」として確信したのは二点。一つ目は十分に調整されたチームワーク。そして二つ目はルールやフィールドにいかに早く対応し、敵より優れたチーム戦術を実行出来るかという点です。
1980年代前半からサバゲーを始め、日本各地やNZで戦ってきて、自分より強いプレイヤーは色々見てきましたが、それでも自分はユニークなプレイヤーであると思います。
野良ハンドガンナーであることから、スニーキングや素早さで知られることとなりましたが、本来的には中学時代に「銀英伝」の洗礼を受けた戦術追求型のプレイヤーです。戦術を追求してきたからこそ、2015単年で503人ナイフキルという記録を作ることも出来ました。
また、自分の能力の中で絶対的な自信があるのは、強敵を嗅ぎ分けるセンスです。
例えば、ニュージーランド全国大会中、110人の参加者の内、2人の戦い振りに目を見張らされたんですが、彼らは最後にマークスマン競技でそれぞれ2位と3位で表彰されていました。
それから、ホキティカの24時間ゲームでは、TCAのように結束の強い分隊なら、より高度な戦術が取れることを実感しました。独りで戦うのにはやはり限界があるからです。
本当に強いユニットなら、フラッツボグとリーパーネットのように、たった2人でも、多くの敵を倒すにとどまらず、戦場をコントロールすることで勝利への重要な要素になり得るのです。
しかしそれでもNZ全国大会勝者となるのは難しいでしょう。フラッツボグとリーパーネットの所属するクライストチャーチ のTAGは2016年チャンピオンであるし、唯一の複数回チャンピオンのネルソンのNACもいます。
そしてHPA(高圧縮エアー)は北島では主流になっている上、その絶対的な静かさは特に野戦でアドバンテージがあります。
実際に全国大会二日目の野戦で自分がいた分隊は、二度もたった1人のHPA使いに全滅させられました(言わずもがなですが、それが前述のマークスマン2位となったプレイヤーです)
特に強調したいのが、複数回チャンピオンであるNACの凄さです。彼らの連係のレベルは他のチームのそれを大きく上回っています。
例えば、彼らは複数のユニットを有機的にリンクしての「挟み撃ちアンブッシュ」も実行可能な上(遠征時それで3つの分隊がほぼ全滅になりました)、驚くことに夜戦でも連携行動が可能です。
モーギンの2マンセルが50mを15分掛けて前進していたのもその一つで、派手ではないものの、忍耐の必要な、低くスローな動きは夜戦では脅威です。50m前進を15分掛けるというのは実感が沸かないと思いますが、3m強、つまり3~4歩進むのに1分掛けるのと一緒です。
これを単独ならまだしも、複数で真っ暗闇の中、苦も無く成し遂げることに驚かざるを得ません。彼らはすでに次のレベルにいると言えます。
ニュージーランド唯一の複数回チャンピオンの強さの秘密とは?
そしてそれを可能にしている秘密に、NACがホスト役となって開催された2016年ニュージーランド全国大会を通して気付くことが出来ました。
その秘密とは、彼らのマインドセット、つまり考え方の根っこの部分です。彼らは個人個人で判断を下しながらも、大きな視点で一つの目標をちゃんと見ています。彼らがそれをちゃんと話し合っているかは訊いていないので分かりませんが、彼らはサバゲーにとっていい未来、つまりサバゲーの普及という共通の目標をちゃんとイメージして行動を取っています。
それは単なる1プレイヤーのものではなく、サバゲーの「消費者」からすでに脱皮しているのです。
たったそれだけ?と思うかもしれませんが、自分が会った本当に強いチーム、強いプレイヤーは、少なくとも単に「相手を倒す」だけのレベルでサバゲーをしていません。そして何より、まず「楽しむ」ことを大事にしています。
NACは全国大会でも関係機関に働きかけて、国有地を使用する許可を得たり、取材も積極的に受けています。それを可能にしたのも、普段から地元への広報活動を継続的に行ってきたからと言えます。
種をまいて育てなければ、収穫も得られないものです。同じく、意識が変わらなければ、見えてくる景色も変わりません。
マインドセットの重要性
長くなってしまいましたが、自分が言いたいのは、NACを超えようとするなら、根っこの部分のマインドセットで後れを取ってはならないということです。
自分の場合、常に国際大会をイメージして戦っていて、それがたとえ負けても、より上を目指す原動力と矜持となっています。
何故なら、負けから自分のウィークポイントを見つけて改良することも出来るので、より多様な強敵と戦うこと自体が楽しみとなっているのです。
そしてそれこそが、自分がクライストチャーチにある、全5チームのゲームに参加する理由でもあります。
全国大会チャンピオンになるのは簡単なことではないですが、個人技に大差はないので不可能ではありません。
分隊のトレーニングについては次のトレーニングを基礎に、チームに合ったものを話し合っていきましょう。
ニンジャSt☮g分隊トレーニング法
この分隊トレーニング法の根底にあるのは、「トレーニングで出来なければ、実戦で実行するのは難しい」ということと、「自身の長所と短所を見つけるのは、自分独自の戦術を確立するのに役立つ」という考えです。
月並みですが、私はそれを“引き出し”と呼んでいます。引き出しが多ければ多いほど、優位を保ったまま相手を出し抜くことが簡単になるのは、自分の単独戦闘の経験から自信を持って言えます。マークされながら2015年単独で503人ナイフキル出来たのも、相手にとって予想不能な立ち回りを心掛けたことがまず第一で、それを支えたのが「引き出しの多さ」ということです。
最近すすめられて「亜人」を観たんですが、近年まれに見るイイ悪役のサトウが言ってましたね。「作戦は奇を以って良しとすべし。」
まさにその通りです。同じく孫子の「兵は詭道なり」という言葉は一言でいうと、「定石通り正攻法で優位を担保しつつも、状況に応じた奇法で相手を出し抜く」ということになると思います。忍者の極意、「忍者の精髄は暴力ではなく、他人が無防備な瞬間をとらえること」や、OODAループ
ニンジャ St☮g トレーニング法要項
1, Designate squad leader every time
1、分隊リーダーを毎回決める
メリット:
OODA Loop(米空軍パイロット養成のため生み出された、迅速な意思決定理論)に親しむ。
全分隊員が指揮官としての視点と戦術眼を身に付けることは、どんなフィールドや状況にも対応するための分隊の潜在能力のボトムアップにつながる。
格言「羊に率いられた百頭のライオンより、ライオンに率いられた百頭の羊の方が強い」
メソッド:
分隊長を指名する。毎回変わることが望ましい。
2016年ニュージーランドチャンピオンになったクライストチャーチのチーム「TAG」は、いくつかの分隊に最初に分け、その日の分隊長を指名することで、チーム全体の地力を大きく向上させた。
方法論としては、主に3~5名の小さなユニットでそれぞれが役割を考えて行動させ(前衛後衛等)、またユニットリーダーには適度な負荷を与えることで、OODAループに親しみ、より俯瞰的な視点で戦況を理解できるようにするというもの。
ここで一つひとひねり。指名された分隊長は、何か新しい戦術にチャレンジするか、もしくは楽しむだけのためにアホなことを提案する(ペ○ス分隊と命名等)。
これは失敗を前提としつつも、それを通して成長することや、楽しむ余裕を常に持つことをチームに根付かせることで、ガチ系チームとして凝り固まるのを防ぐことにつながる。
例えば、大きなゲームの最後に行われるCSG突撃は、戦略的にも戦術的にも無意味なものですが、チームとしての連帯感の醸成、さらには盛り上げることで「面白い奴ら」としてプラスの認知度も得られます。
手前味噌ですが、cheerio delivery challengeでは遠くから来たチームに、24時間ゲームの深夜にお土産を届けました。
面白いからやったんですが、いい潜入訓練になったし、何より喜んで貰えたのが一番です。
「楽しむ」ということはとても重要なことで、たとえ一度は嫌になってサバゲーから離れても、楽しい思い出があれば、いつか必ずフィールドに帰ってくるものです。
2, Review game
2、ゲームを復習する
メリット:
それぞれの視点からのフィードバックを分隊で共有することで、次の分隊行動への糧とする。
チームの絶対的な勝ちパターンを把握し、共通認識化することができれば、何よりの強みとなる。
それがあれば、例え負けても精神的なリレーポイントがあるので立ち直りも早い。それに独自の戦術があるチームは相対的に強いものです。
メソッド:
ゲームの復習をする。いい動きと悪い動きを話し合う。試みの失敗があれば、解決策を考える。
ゲーム中の決定機の一瞬の判断を振り返ることは、次に似た状況になった際に、確実に余裕を持った判断を下せる土台となる。
復習は簡潔にでも毎ゲーム行った方がいい。記憶が新鮮であるし、次のゲームに反映されるからである。
帰宅時の全体の復習もオススメ。
3, Sharing vital info
3、重要な情報をシェアする
メリット:
高いレベルでの戦いで勝つための基礎をものにできる。
メソッド:
敵の情報も大事ですが、味方の状況は時にそれより重要になります。NZの全国大会で、多くのチームがコミュニケーション不足で負けるのを見てきました。特に他のチームメンバーのヒットへの遅い反応は、見ていて致命的でした。
それを避けるには、チーム内で誰が撃たれたか、またそれに対して即座にどう対処すべきかの情報の共有が大切です。常に誰がどの方角をカバーするか、そして状況が変わったら誰が対処するか、分隊長は常に気に留め、時に応じて指示を出します。
しかし、お互いに声を出しながら、命令なしに即座にカバーし合い、味方全体に伝えることが出来るのが本来望ましいです。
4, Pick up video clip n discuss
4、動画を教材に議論する
メリット:
様々な角度から他人のプレイを分析することで、自分たちの戦術の養分としていくことができる。
いいサンプルがあれば真似をしてみたり、事前にそれに対する対処法も考えることができる。
メソッド:
持ち回りの進行役が動画をピックアップする。自分たちのビデオでも、ウェブ上の適当なサンプルでも構わない。
どこが決定機だったか分析し、同じあるいは似た状況でどうするか話し合う。ライン上でしても効果は見込まれる。
5, Warming up game with springer.
5、コッキングガンでのウォーミングアップゲーム
メリット:
基本スキルの一番効果的な育成。機動、照準、動じないメンタル等を一度に身に付けることができる。
反撃するよりも、時には逃げることが有効なことも身をもって知ることができる。
純粋にサバゲーの根源的な面白さに最も近く、また後述のペナルティーもスキルの育成に役立つ。
ゲーム案「コッキング銃(出来ればマルイの1900円シリーズ)で鬼ごっこ」
基本的に銃を撃てるのは鬼役の一人だけ。撃たれた人は即座に鬼となるが、撃った人を撃ち返すのはNG。しかしすぐに他の人を撃つのは可能。
基本的に誰も隠れることは出来ない(変更可)。5-10分の短い時間だが停滞することはまずないのでウォーミングアップに最適。使用銃はマルイの1900円シリーズのコッキングハンドガンが望ましいが、スナイパーを混ぜても、スナイパーの限界を知り、対処法を肌で知るためにもいいのでアリ。マルイのコッキングショットガンはゲームバランスが崩れると思われるので、初心者に限り解禁する。
最後に鬼になったプレイヤーがペナルティーで罰ゲーム。
動くターゲット役か、30~40mくらいで弾をよけ続ける「弾よけダンス」をする。
撃つ側はムービングターゲットの練習が出来、撃たれる側はよける練習となるし、何より盛り上がる。
6, Tight-knit unit can make its numbers addition to multiplication
6、結束の強いチームは、人数を足し算ではなく掛け算にすることが出来る
メリット:
メンバーのあらゆる長所を伸ばす過程で、チームカルチャーと結束を育てる。
メソッド:
個人個人のコールサイン入りのパッチに「自分はNo.1~」であると明記する。他のメンバーが考えても可。評議制にしてもいい。他チームとの交流戦でも、話すいいキッカケとなる。
また、フィールド外でも、何か楽しいことや新しいことを常に試すことも、チームのエネルギーを高めるのに役立つ。
最後に
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最後まで読んでくれた人ありがとう。すべてを実行することは難しいとは思いますが、これまでの自分の経験や、国内外の本当に強いチームを見てきての、現時点での最適解だと自負しています。
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これをまとめて改めて分かったことは、自分はチームリーダーになりたいのではないということです。自分の強いチームを作りたいなら、ノウハウは囲い込むと思います。もともと、このトレーニング方法はニュージーランドの若いけれど、連係の取れたチームのために作りました。
どちらかと言えば、実戦での方法論というよりは、精神論的な話になってしまいましたが、視点を高く、かつ地力をつけることで、もっといいチームになって貰いたいという思いからです。
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自分の夢というか理想としては、自分の理想のチーム戦術を実行できる分隊長を育てることで、最もベーシックかつ効果的な「時間差挟撃」と「釣り野伏り」をいつでも実行可能な部隊が出来れば、世界でもかなりのレベルで戦えるはずと身をもって感じます。
少なくとも味方ユニットを軸にして自分独りで実行しても、ニュージーランドのトップチーム相手にも凶悪な火力を発揮したくらいなので、アメリカ型の軍事ドクトリンに、戦国時代の兵法が通用するのはサバゲーならではのロマンがあると思いませんか?勝つために“死”が許容される、サバゲーならではの奥深さです。「No one left behind.(誰も見捨てない)」という現代戦の軍事ドクトリンでは、死を前提にした作戦は建前上実行不可能なので、そこにつけいる“隙”が出来るという訳です。
せっかく日本発祥のスポーツなので、いずれ開かれるはずの国際マッチで、日本チームも「流石サムライの国だ」と一目置かれるだけの、掛け値なしの実力を発揮出来たら素晴らしいと個人的には思います。
ー 第二章 完 -